■著作権の専門家が「ほぼ100%アウト」とする理由
「著作権とは色々な権利の集合体です。AKIRAの件では、その中の翻案権を侵害しているといえるでしょう。
もちろん侵害にあたるかどうかは、裁判所が判断することです。しかし、AKIRAの件はバイクの形だけでなく、バイクに貼られているシールなど細部にわたって一致しています。提訴された場合、ほぼ100%アウトでしょう」
“パクリ”の定義について大塚教授は続ける。
「裁判の言葉では“ある作品を見た上で作ったかもしれない”という可能性のことを依拠性と言います。実際に見たかどうかはご本人にしかわかりませんが、依拠性は証拠がなくても推測で成立します。そのため、あまりにも似すぎている場合、“依拠性がある”と判断されます」
とはいえ、古塔氏の作品を「AKIRAのオマージュ」と言うこともできるのではないだろうか? すると大塚教授は「そこで肝心なのが、引用における明瞭区別性と主従関係性です」といい、こう続ける。
「ネットニュースに例えてみましょう。誰かの言葉を引用して、ネットニュースを制作することがあります。その際、引用した部分と記事の伝えたい部分が明確に分かれていると、記事の内容が“主”で引用部分が“従”の関係といえます。実は『引用をキッカケにして、本質の異なるものを新たに制作するなら問題ない』と法的に許されているんです。ただし、どこから引用したのかをはっきりと書いておく必要があります。
ただ古塔さんの場合、AKIRAのイラストとの主従関係がよくわかりません。ですからオマージュと言うには難しいと感じます」
また大塚教授は、パクリとオマージュの違いをもう1つ教えてくれた。
「一般論として、敬意があるかどうかで分かれますね。オマージュは、オリジナルの作品に感動して制作されるもの。いっぽうパクリとは、元の作品をただ利用しているだけです。
言い方は厳しいかもしれませんが、古塔さんに対して『自分の作品を作るために他者の作品を利用した』という印象を受ける人もいるのではないでしょうか。主従関係性が明瞭ではないため、他者の著作物への敬意を感じることが難しいのです。そのため、オマージュではなくパクリと認識されても仕方がありません」