■4人の孫が誕生「長生きしてよかった」
風吹の母親は晩年、認知症を患ったという。『徹子の部屋』で風吹は介護生活をこう語っている。
「大変でしたね。あの賑やかな母親でしたから、突然病院から電話がかかってきて『迎えに来て!』って言うんです。反抗期なのかな? 私に腹が立って救急車を呼んで入院しちゃうんですよね。つまらないとすぐ『迎えに来て!』。とってもワガママ言ってました。最後はお手伝いさんも次々と断っちゃうので、とても手が回らなくて兄にもお願いしたんです」
兄妹で協力しながら介護に奔走していたという。母親が京都で臨終の際は仕事の都合で間に合わず、風吹は到着後、故人の体を清める湯灌を自ら行ったという。親子関係カウンセラーの横山真香さんは“捨てられた親”の最期を看取ることは、子供にとって大きな意味があると言う。
「そういう親の場合、亡くなる寸前になっても会わない子供はとても多いです。でも、それは親の本当の姿を見るチャンスを失うことと同じだと思うんです。親が年老いていけば子供も成長して人生の酸いも甘いも知る。あんなに嫌いだと思っていた親と数十年ぶりに再会したら『お父さんも苦しかったんだ』とか『お母さんはこう思っていたんだ』と察して、積年の負の感情が初めて着地できることもあります。
風吹さんにしても、きっとお父様に会っていなかったら家庭を捨てた父親とその不倫相手という見方で終わっていたことでしょう。しかし実際に対面したことでお父様と相手の方へ新たな理解ができた。風吹さんの今後の人生に貴重な時間だったと思います」
壮絶な半生を歩んできた風吹。だからこそ、その言葉にも重みがある。彼女と一緒に仕事をした制作関係者は言う。
「ドラマの撮影がきっかけで、風吹さんとスタッフ数名でご飯を食べに行ったんです。
そのときに人生相談に乗っていただき、『誰かを恨んで生きるのはとてもつらいこと』と言われたことが今でも心に残っています」
風吹はいま4人の孫がいる。米国にいる孫2人とはリモートでも交流しており「長生きしてよかった」と心底思っているそうだ。波瀾万丈の人生を経て、両親を看取った経験が彼女の明るい70代を支えていたーー。