■ヒロインの葛藤や成長が見られない
扱うテーマだけでなく、ヒロインの人物像も掘り下げられていないという。
「最初の震災のトラウマから始まり、栄養士の専門学校でも品切れだった小松菜の代用品としてスイスチャードを見つけてきて、急に“野菜のことならなんでも知っている”キャラに豹変。『うち農家の娘やもん』とセリフで説明したものの、どこか唐突。毎日ずっと見ていたはずなのに“もしかして昨日見なかったっけ?”っていうのを毎回視聴者に思わせる気持ち悪さがありました。
管理栄養士の勉強も、結は子供を抱いて参考書に付箋貼るだけなんですよ。その前の栄養士の資格試験のときも同じ。それで、“もうなりました”といきなり病院勤務の4年目で、ベテラン風吹かしてバインダーを持って歩いている。
朝ドラの視聴者には、ヒロインに感情移入して共感したい人が多いです。そのため、ここだったら普通の栄養士と管理栄養士の違いや、1年目の戸惑いなどが描かれることを期待したのですが……。全体的にヒロインの葛藤や成長を全然見せてくれないため全く共感できませんでした」
さらに、エピソードや設定に必然性が欠けていたり、逆に取って付けたような“ご都合主義”が悪目立ちするという。
「そもそものギャルの設定や、書道部にいた話は必要だったのでしょうか。コロナだってまず結が豹柄のマスクでもして”ギャル魂”で乗り切るとか、ギャルとしての何かをやればいいのに、ギャル要素がすっかりなくなっている。
この間なんて、お姉ちゃんがコロナでアパレルショップの経営が傾いたからネット販売に乗り出そうとしたとき、結がその1話前の中盤から急にパジャマみたいなグレーの地味な服を着ていたんですよ。今までそんなの一度も着たことないのに。
それで、リモートでお姉ちゃんが『結、何その格好?』みたいなことを言う。これまではそんなの着ていなかったんだけれど、『しょうがないよ、家と病院の往復なんだもん』とか言って(笑)。それを言わせたいがための服装なわけですよ。結局、ギャル要素がほとんど活かされずに消えてしまった印象です」
また、パターンが常に同じで既視感を抱かせる点も指摘する。
「お弁当の開発も、その前の阪神淡路大震災の記念のイベントの炊き出しのスープの話も、翔也の務める電気会社で炊飯器の食べ比べする話も、周囲の人々の知恵と協力で解決する。いつも同じパターンなんですよ。だから、視聴者としては“あれ?これって見たよね”ってなる。主人公は成長したはずなのに、また0から始まっている感じがするんです。
朝ドラってヒロインの成長を楽しむドラマでもあるじゃないですか。成長して、その上で新たにぶち当たった困難に立ち向かう。だから応援するんですが、そこが全く見れなかったのが残念でした」
残りあとわずかとなる『おむすび』の放送。視聴者の心に何が残るのか。最終回がその答えになることを願いたい。
