霜降り明星・粗品(写真:本誌写真部) 画像を見る

12月13日に放送された『女芸人No.1決定戦 THE W 2025』(日本テレビ系)。9度目となる今大会、異彩を放ったのは新たに審査員に加わった霜降り明星粗品(32)の存在だ。

 

コンビで『M-1グランプリ2018』、ピンで『R-1グランプリ2019』の2冠という偉業を達成し、芸人としての実力は誰もが認める粗品。今年3月の『第14回ytv漫才新人賞決定戦』(読売テレビ)で辛口ながらも説得力ある論理展開で、審査員としても鮮烈なデビューを果たしていた。

 

12月11日に『THE W』大会公式Xが投稿した動画内で粗品は、『THE W』の審査方法が点数制ではないためか、これまでの審査員は「どっちもおもろかったんですけど」などと敗者へのフォローが目立ったと批判。「日テレが血の海になったらすみません。でも俺も本気でやりますから」と覚悟を滲ませた。

 

その宣言通り、粗品は今大会でオープニングから「女やからおもんないとか、女のくせにおもろいとかそういうのは一切抜きにして真摯に審査したいと思います」と笑いゼロで宣言。さらに、パンツ万博に対しては「正直1秒も面白くなかったです」とバッサリ言い放ち、エルフには「普段質の悪い客の前でしかネタ試せてない」「渋いやり取り増やして頑張ったら絶対女王どころか、王にもなれます」などと厳しくも的確なアドバイスを送り、エルフの荒川からは「本当にありがたいんですけど、Wから出て行ってくれませんかー?」と言われていた。

 

これまで女性芸人限定であるがゆえに、エントリー総数が少ないことなどから一部で“ネタのレベルの低さ”などさまざまな批判もあった『THE W』だが、お笑い評論家のラリー遠田氏は粗品の起用が、そうした問題への解決策の1つとして機能したと指摘する。

 

「今までの『THE W』では、審査員が出場者に対してあまり厳しいコメントをしない傾向がありました。ただ、視聴者の立場から見たら、ネタが面白くなかったら”面白くない”と素直に思いますよね。それなのに、審査員があまり完成度が高くないネタに対しても当たり障りのないことや褒めるようなことばかり言ってると、物足りない気持ちになるでしょう。そのことで視聴者の間では『THE W』への不信感が生まれていました」

 

そんな状況に風穴を開けたのが、ラリー氏が「審査に関しては正直」と評する粗品だった。

 

「『M-1』や『キングオブコント』ではまだ決勝に行けないようなレベルの人たちが『THE W』だとファイナリストになることがありますが、正直なところ、そういう芸人は技術的には未熟なところがあったりもします。その部分をごまかさずにはっきり指摘すると、現場はちょっとピリッとしますよね。

 

しかし、視聴者からすると、自分の気持ちを代弁してもらえたと感じる部分もあります。”やっぱそうだよね”、”さっきのネタ、笑えないと思ったけど、プロから見てもそう見えるんだ”という納得感はあったのではないでしょうか」

 

手心を加えず正直に審査する。つまり必要ならときには厳しく審査することで視聴者は満足し、大会としても“格”を保てるとラリー氏はいう。

 

「『THE W』という大会自体が今までは“舐められていた”わけですが、審査員がちゃんと考えて審査してると伝われば舐められなくなります。『ここは良くない』とか『ここは笑えない』っていうのも粗品さんは具体的に説明してますよね。ただの悪口ではなくて、正当な批評をしていることが聞いていれば伝わるので、見てる側にも満足があったのだと思います」

 

明確なメリットもある一方で、粗品の辛辣な審査に対して”感じが悪い”、”聞いていて不快”などのネガティブな反応も少なくはなかった。しかし「それはそれで話題作りにはなっている」とラリー氏は指摘する。

 

「放送後に粗品さんのネットニュースがたくさん出ましたよね。SNSでは賛否両論ですが、結果的にすごく注目度が上がってるという点では成功です。これまで今ひとつ世間には刺さっていなかった『THE W』というコンテンツが、粗品さんの審査によって多くの人に”良くも悪くも”印象に残ったという事実があるので、そういう意味でも彼の存在は大きかったと思います」

 

実は、粗品は自身のYouTubeチャンネルで今回の審査について「ちょっと優しく言いすぎた」と振り返っているという。

 

「普通の感覚だと『ちょっと厳しく言いすぎた』などと言いそうですが、粗品さんは逆。バランスを取るためにあえて厳しいことを言うだけではなく、褒めるようにもしていたと話していました。たぶん彼の本音としては、もっと素直にブレずにフラットに自分が感じたことを伝えたかったんでしょうね。

 

粗品さんは、『プロとしてやるんだったら、こういうところがまだ足りてないよ』というのを差別せずにちゃんと言う。女性芸人なのにすごいとか、若手の割にはがんばっているとかではなく、出場者全員をプロとして扱っていたのだと思います」

 

粗品のこれまでとはひと味違う審査スタイルは、今後ほかの大会でも広がっていくのだろうか。粗品がほかの大会で審査員を任されたり、ほかの審査員が彼の審査に影響を受けて厳しいことを言ったりするようになることはあるのか。

 

「粗品さんへの審査員のオファーは広がるとは思います。『M-1』の審査員も少しずつ若い世代に移っているし、自然な流れですよね。ただ、ほかの審査員が粗品さんのスタイルに影響されることはないでしょう。

 

なぜなら、審査員を任されるような立場の芸人は、全員がこの業界で結果を出していて、実力があるからこそ、そこにいるわけです。それぞれが表面上は粗品さんさんほど厳しいことは言わないとしても、誰もが責任感を持ってそこに座っているという意識はあるはずです。粗品さんの審査が話題になったからといって、安易にそれに流されるようなことはないでしょう」

 

『THE W』だけでなく、お笑い賞レース全体に功績を残している粗品だが、あの審査スタイルにデメリットはないのだろうか。

 

「デメリットはもちろん、粗品さんばかりが目立ってしまうことです。本来は賞レースの主役は出場している芸人であるはずですが、たとえば今回の『THE W』では、優勝したニッチェよりも粗品さんの方が注目されてしまっている。

 

でも、今回に関しては、そうなるリスクを負ってでも、この大会を立て直したいという思いが制作側にあったからこそ、あえて粗品さんを起用したのでしょう。厳しい審査で波風が立ったとしても、それが長期的には大会にとって良いことだと判断したのでしょう」

 

閉塞感を打破した粗品の審査。今後のお笑い界にどのような変化をもたらすのだろうか。

画像ページ >【写真あり】出場芸人たちに的確かつ辛口なコメントを連発した霜降り明星・粗品(他2枚)

出典元:

WEB女性自身

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