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「古舘伊知郎さんとはNHKの番組でご一緒して以来の縁です。私は面食いなので(笑)、古舘さんとプライベートで飲みに行ったことはなかったのですけど、あるとき『今まで言ってこなかったような、かっこ悪い部分もしゃべりましょう』と提案されました。このまま女優っぽく、かっこつけたまま死ぬのは嫌だと思って。だからこの本は遺言代わりなのよ」

 

女優の中村メイコさん(84)が古舘伊知郎(63)を聞き手とした自伝、『もう言っとかないと』(集英社インターナショナル)を出版した経緯を明かす。同書では82年もの芸能生活を振り返り、美空ひばりとの交流秘話、吉行淳之介との初恋、そして自らの墓についても踏み込んでいる。

 

「死は毎日、意識しています。もう、長く生きすぎましたからね」

 

そう語るメイコさんに、“終活”について聞いた。現在、メイコさんは都内のマンションで、夫の神津善行さん(86・作曲家)と暮らしている。

 

「’14年に引っ越したんですが、それまでは体育館みたいな大きな家に住んでいたんですよ。敷地は300坪で、地上2階、地下1階。一時期は、夫婦に子ども3人、義母や実母、夫のアシスタント3人、お手伝いさんが2人という大所帯でした」

 

家には82年の芸能生活の思い出が詰まっていた。

 

「女優は贈り物をたくさんいただきます。私は昔の女優なので、花や人形、お洋服に囲まれて生活するのが当たり前なんですよ(笑)。美空ひばりさんはじめ、多くの方からのいただきものをたくさん置いていました」

 

3歳年下のひばりさんと初めて会ったのはメイコさん17歳のころ。すでに2人とも芸能界のスターだった。だが、親しくなったのは、ひばりさんが小林旭(79)と離婚した直後。すでに、メイコさんは2人の子どもの子育てをしていた。

 

「ひばりさんのお母さまがわが家にいらっしゃって、『ひばりに普通の家庭生活を見せてほしい』と頼まれました。それでひばりさんが家にいらっしゃるようになって、すぐに意気投合しました」

 

2人はお酒好きという共通点があった。ひばりさんはよくメイコさんの持ち物を欲しがったという。

 

「『あなたおもしろい服を着ているのね』と言われて、よくプレゼントしました。でも、ひばりさんからいただいたものは、一目見れば“美空ひばりです”というものばかりで、なかなか着れませんでしたね(笑)」

 

ほかにも榎本健一さんや古川ロッパさんなど、芸能界を彩った多くの名優たちからのプレゼントが家にたくさんあった。

 

「でも、夫婦で“そろそろ何とかしないと”と話していたんです。それでものを捨てて、引っ越すことにしたんです」

 

家にあった台本や手紙、多くの贈り物も、思い切って手放した。地下室に保存していた300本ものビンテージワインは行きつけのお店に引き取ってもらった。

 

「いただきものはひとつひとつ贈ってくださった方を思い出しながら、2週間かけて処分しました。トラック7台分にもなって。男を捨てなかったぶん、モノを捨てるのはいい気持ちでしたね(笑)」

 

人生の一部を手放すことで、心がすっきり軽くなったという。

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