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「お茶の師匠を演じた樹木希林さん(享年75)には撮影前、私が、お正月用のお点前(お茶をたてる茶道の一連の手順)を2回お見せしました。その後、2人で“エア”で手順を3回練習しただけで、流れがすべて頭に入っていました。撮影もすごい集中力でお点前をされていました」

 

そう語るのは、茶道をテーマにした大ヒット中の映画『日日是好日』(大森立嗣監督)の原作者・森下典子さん(62)。黒木華演じるヒロインの典子は、茶道を学び、作法を身につけていくなかで、季節の風や雨を味わい五感を研ぎ澄ませ、和の文化の素晴らしさに目覚め成長していく。

 

師匠の武田先生を9月15日に亡くなった樹木希林さんが演じ、話題を呼んでいる。森下さんは、映画の現場でお茶指導、茶道具や掛軸などのコーディネーターも務めたという。

 

「昨年末の撮影中に樹木さんは台詞一回一回、声の調子や言い方に変化をつけられていて。主人公に『あら、典子さん』と声をかける場面一つとっても、一言にご自身の思いをどう込めるかを考えて繰りかえされていて、見ているだけで心に染みました」

 

お茶室は、横浜市の広い芝生の庭のある家にセットをつくった。

 

「そこは樹木さんの妹さんの嫁ぎ先の空いているお家で、庭に茶室を建て増し、茶庭、板塀。路地まで作ったんです」

 

20歳でお茶を始めた森下さん。お茶を通して学んだことを綴った『日日是好日-「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』(新潮文庫)は、’02年に単行本出版以来版を重ね、映画化とともに話題を呼び、現在累計46万4,000部を突破。10月に出版された続編『好日日記―季節のように生きる』(PARCO出版)も好評だ。

 

映画の後半、樹木希林さん演じる武田先生は、こう語る。

 

《私、こう思うんですよ。こうして毎年、同じことができることが幸せなんだって》

 

「樹木さんは、『お点前は“演技”としてやります。お茶の心を理解してのお点前はあきらめました』と、おっしゃっていましたが、撮影前に1カ月、秘密の特訓をされたようで、袱紗さばきもとても滑らかに身につけていました。不思議と私の師匠のお点前と似ていました」

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