「同い年の俳優さんと話すんです。『若いころから一緒に芝居してるけど、30年もよくやってきたよね』って」

 

そう話すのは、小心そうな雰囲気で、俳優として出演する作品以外に路線バスでの旅番組でもお茶の間を和ませる温水洋一(54)。今年で芸歴30年だ。

 

「第一線ではなく“脇を固める”というんでしょうかね、隅っこからちょっと真ん中寄りの“第二線”あたりにいて、役者で食べられるのはありがたいことです」(温水・以下同)

 

演劇との出合いは高校時代。気になるクラスの女子の勧めで演劇部に入ったのがきっかけだった。現在は、三島由紀夫原作の舞台『命売ります』(11月24日~12月9日/東京・サンシャイン劇場、12月22日/大阪・森ノ宮ピロティホールにて)の稽古に余念がない。

 

「台本にはなかったのに、歌うと突然言われて。聞いてなかったんですけど、まぁ歌が入るとメルヘンチックになるから……。舞台で歌うのは15年前の三谷幸喜さんのミュージカル『オケピ!』以来。パートに分かれたりハモったり、結構難しいんです」

 

物語は、自殺に失敗した主人公(東啓介)が、自分の命を捨て売りしようと「命売ります」という新聞広告を出すことから始まる。彼のもとには、さまざまな事情をもった客がやってくる。温水は、愛人をつくった若妻を殺したいと思っている謎の老人役だ。生死のはざまで揺れる人間たちをユーモラスに描いている。

 

「三島先生が割腹自決した日のことを覚えていますよ。幼稚園から帰ってテレビでアニメを見ようと思ったら、どのチャンネルも中継で様子が違っていました。市ヶ谷の防衛庁(当時)を新しく建て替える前、自衛官だった父は『おまえ知ってるか? あの屋上で作家の三島由紀夫が演説して自決したんだぞ』と言っていました」

 

今回共演する不破万作は72歳。

 

「三島先生が存命中、不破さんが出ている公演の最前列に見に来られていたとか。先生は不破さんのお芝居を見たんですね!? 不破さんはそのころすでに演劇をやっていたんだなぁ」

 

これからも芝居を長く続けるために、決めたことがあるという。

 

「前の晩、どんなに遅く寝ても、朝、どんなに早起きしても、必ず朝食を取るのがうちのルール。今朝は冷蔵庫に1玉だけ残っていたうどんにおあげとねぎを入れて、つるっと妻と半分こ。あと、僕も手伝って作ったサラダ」

 

今日の私服は、胸にドクロのマークのシャツに、キャップ。

 

「普段着は夫婦で出かけたときに、妻に見立ててもらってます」