(撮影:飯酒盃智明) 画像を見る

一度見たら忘れられない顔立ちで、広告や雑誌のモデルとして唯一無二の輝きを放つ、モトーラ世理奈(21)。撮影中、カメラマンが「好きな食べ物は?」と聞くと、しばし沈黙の後、笑顔で「春菊」と答えた。

 

彼女には、女優としての顔もある。主演映画『風の電話』(1月24日より新宿ピカデリーほか全国公開)について聞くと、独特の間でゆっくりと言葉をつむぎはじめた。

 

「初めて台本を読んだときは、つらすぎてあんまりやりたくないなあと思って。オーディションでも悲しい気持ちが抑えられず、何も言えなくなっちゃったんです」

 

そんな様子が監督の目に留まり、主役に抜てきされることに。本作は、岩手県大槌町に「天国につながる電話」として実在し、東日本大震災以降、3万人以上が訪れた“風の電話”を題材に描かれた。モトーラが演じるのは、震災で家族を失った高校生・ハル。広島に住む伯母の家に身を寄せていたが、あることをきっかけに岩手に旅立つ。

 

「広島から埼玉、福島、仙台、岩手とずっと泊まり込みの撮影で。一回家に帰っちゃうと、自分のスイッチのオンとオフが大変だなと思っていたので、ハルと同じ道のりを一緒に旅していました」

 

撮影の後は毎日スタッフと語り合ったそう。「一人だと寂しくなっちゃう(笑)」という、人懐っこい一面が垣間見えた。

 

諏訪監督は、現場で台本を使わず、俳優の即興芝居を引き出す。

 

「監督は『その場所に行ってみないとわからないし、そこで人に会ってみないとわからないじゃん』と。今回のやり方が自分にはすごく合っていて、自然にハルに入ることができたし、むしろ生き生きと演じられた気がします」

 

埼玉で、クルド人の同世代女性と話すシーンでは、素の自分が話している瞬間もあったそうだ。

 

「『ハルちゃんは何が好き?』と聞かれて、猫が好きって答えたら、『私、動物嫌いなんだよね』と言われて。どうしよう、話続けられないって、ちょっとドキッとしましたが、面白かったです(笑)」

 

最後に、ハルと共に旅をしたモトーラは何を感じたのだろうか。

 

「震災のときは小学6年生で、私にとっては遠くのことだと思っていました。あれから9年。私は21歳まで、自分のなかでいろんなことが起こってあっという間だったけど、大槌に行ったら同じ時間が流れていたとは思えないぐらい何も変わっていないのがショックで。東京にいると気づかないけど、知らなきゃいけなかったんだと思いました」

 

「女性自身」2020年2月4日号 掲載

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