■平坦な道のりではなかった——
今回、喜びをあらわにした、だいたと小泉さんご夫婦。
しかし、妊娠までの道のりは生半可なものではなかった。14年から不妊治療を始めたものの、16年1月に乳がんが発覚。一時中断となり、乳がん治療のため右胸全摘手術を受けた。さらに19年3月に乳がんが再発し、そのとき、本誌に気持ちを語ってくれている。
19年3月6日の、しこり切除手術の日について、だいたは持ち前のトーク力でユーモラスに話した。
「日帰り手術なので、美容院感覚で切りにいってきました。(16年に)全摘してるし、取るところなんかなさそうですよね。骨と骨の間の身をこそげ落として、中落ちにするみたいな手術ですよ。マグロの気持ちが初めてわかりました」
しかし、病気を経て、初めての心境にも。
だいた「私はがんになって、もしかしたら死ぬかも? って、“死”と初めて対面しました。大きな病気をしたことない人ががんになったら、たいていそうなると思いますよ。それでどういう死に方するのかなとか、どれくらい生きられるのかなとか、まあ考えるんですけど……。自分のモノのなかで変な日記とか、他人に見せない前提のモノってあるじゃないですか。これを片づける人は誰か? って考えたときに、捨てとかなきゃ! って思いますね。思い出より未来のほうが大切になってくるものなんですよ。モノだけじゃなくて友達でも、理解がないなっていう人とは、やっぱり付き合いづらくなるというか……。がんにならなくても人間必ず死にますけど、限られた時間を大事な人たちと過ごそうと思うようになると思います。そういう意味で身軽にしようとしますよね」
夫の小泉さんは取材当時、いつも明るい妻をこう気遣った。
小泉「さすが芸人というか、手術のこともマグロの中落ちにたとえたりして笑いに変えてくれたりしますが……。そんな言葉に救われつつ、矛盾するようですが、彼女らしさが出れば出るほど、悲しくなる部分もあります。いつも頑張ってるんだから、大変なときにはがっつり落ち込んでもいいのになって思うこともあります。そばにいる僕にもっと頼ってくれればいいんですけどね」
寄り添う二人には、いつ取材しても、互いを思いあう穏やかな絆が見て取れた。
そのおかげだろうか。乳がん治療を中断して不妊治療を再開することを報告し、21年5月には、最後の不妊治療として40歳のころに凍結した受精卵の移植を行っただいたと、小泉さんの二人に、奇跡が舞い降りた——。