■収録がない日に一人で受けたNHK恒例の新人特訓
劇団でレッスンを積み、オーディションを受けるも、なかなか合格しなかった。
「落ちた番組を見ると“やりたかったなあ”と悔しくて」
デビュー作となったドラマは『絆』(’80年・NHK)。是枝裕和監督で福山雅治主演の映画『そして父になる』(’13年)のような、“赤ちゃん取り違え事件”をモチーフにした作品だった。
「中村玉緒さんが私の母親役で、共演は加賀まりこさんや、天才子役と言われていた吉岡秀隆くん。そんな中で、私だけが下手で……。収録もリハもない日に一人だけ呼び出され、スタジオで特訓を受けたことがあったのですが、これは当時、NHKで恒例だった“新人特訓”だったようで、そのスタジオに間違えて入ってこられた劇団の先輩の大竹しのぶさんが、『私もやらされたよ』と言われたので、びっくりしました」
NHKの現場で基礎を固めてもらえたおかげで、着実に役がもらえるようになった川上さんは、『3年B組金八先生』(’79〜’11年・TBS系)の第2シリーズで、生徒役を射止める。
それから間もなくして、『おしん』への出演が決まった。
「今も当時も、朝ドラに出ることは役者にとってステータス。しかも橋田壽賀子先生の原作・脚本です。私なんかのランクでは、お話すらできないので、橋田先生が現場に来られても、遠くのほうで見ているだけでした」