■「医師からの説明を録画して家族に送信」
早期の胃がんと診断された東は家族に客観的な判断をしてもらうために、ある行動に出た。
「まず、説明は録画させてくださいと伝えました。胃カメラの画像も撮影したかったのでお願いしたんです。夫や親や妹にLINEで全部送って『これが全てです』って。私が先生の話を聞いたうえで家族に説明したら、自分の余計な先入観が入るかもしれないし、間違うかもしれない。専門用語も多いですし、ノートにメモでは追いつかない。インフォームドコンセントは、この方法をお勧めします」
治療は当初、胃がん手術のスタンダードだという胃の3分の2~2分の1の切除手術を提案された。
「自分の人生は自分で決めたいのでいろいろ聞きました。だから先生からも『こんなに質問される患者さんは初めて』と(笑)。私の場合、胃を取らなくてもいいレベルだろうけど切除することで安心して生活できると。『手術で切るほどじゃなかったとなる確率は?』と聞いたら『90%』だと。それならば最後の選択肢として出てきた『内視鏡的粘膜下層剥離術』を選びました。リンパ節に転移がなく、場所や大きさが条件に合ったからこそできる手術です」
手術は胃カメラ室で2~3時間程度で終了したという。東が自分の病いと冷静に向き合えたのは、29年間の医療関係のボランティア活動での自身の経験で培ったもの、そして、夫の闘病も影響しているようだ。
’12年、夫の堀川恭資さん(58)が首の筋肉が意思とは関係なく傾く難病「ジストニア痙性斜頸」に。治療法が確立されていないため自宅療養しかできず「夫が寝たきりだった2年間強が、本当にしんどかった」と振り返る。
「ですから夫には心配かけないよう最初から驚かせないような言い方をしていました。“今の時代は2人に1人はがんになるし、治療法のある病気だから”と。彼は現状治療法のない病気なので“治せるしね”と彼なりに納得していました」
今回の胃がん手術を経て、ライフスタイルを見直したという。
「食生活は一変しました。野菜をよく摂取するようにして今は14時間以上胃を空けるようにしています。コロナ禍では深酒や、好きなもの好きに食べていましたから。お酒は“たしなむ量”にしておいしく飲めるようになりました(笑)。ピラティスもより熱心になったり、あとは考え方を前向きに、ポジティブに意識するようになりました。おかげさまで先日の生体と映像検診では問題なし」