女優だけでなくスタッフも…映像業界の“性加害”がはらむ複雑さ「声上げにくい」
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■俳優だけでなくスタッフも被害にあっている

 

多様な被害者がいることを知った港氏は、「自分の思い込みに気付かされることもありました」と明かす。

 

「脚本家は、現場との接点がそれほど多くはありません。ですから会を始める前、僕には『業界内での被害当事者は俳優たちばかり』という思い込みがありました。しかし、なくす会で話を聞くうちに、スタッフもひどい目に遭っていると認識することができました。

 

多くは女性ですが、男性が被害者になるケースもあります。会が結成されていなければ、気づかないままだったのかもしれません」

 

港氏は「なくす会には、被害当事者と支援者が参加しています。両者が集まっているからこそ、被害者が声を上げやすい環境作りに貢献できるのではと考えています」といい、こう続ける。

 

「声を上げる当事者たちは、それだけで大変な思いをしています。ですから、それ以上の活動を押し付けるべきではない。映像業界から性暴力をなくすためにできることは、むしろ支援者が積極的に行うべきだと思います。

 

また我々は、『被害者は必ず声を上げなくてはならない』とは考えていません。被害者にはそれぞれの事情があるためです。

 

この会は『被害を受けた人たちがこの業界をどうしたいと考えているのか』と被害者ファーストで、映像業界における性暴力の問題に取り組んでいきたいと考えています。なくす会の存在が、立ち上がった被害者や声を上げることのできない被害者、それぞれの心の支えになればいいと思います」

 

■いまだ、映像業界の権威である日本映画監督協会は全く動かない

 

最後に、港氏は会の目標についてこう語る。

 

「次のステップは要望書を映像職能連合に持っていくことです。映職連には撮影や編集、録音や記録といった映像制作に携わる全パートの協会が集まっています。

 

是枝裕和監督らの映画監督有志の会は要望書を映連に持って行きました。また今は映像業界だけでなく、演劇や出版といった業界でも性暴力をなくすための団体が次々と生まれています。色々な角度から性暴力の問題に関して提起することが重要ではないでしょうか。それぞれの視点で活動しつつ、連携していければとも考えています」

 

また、なくす会は映像業界で性被害を受けた時の相談窓口や、勉強会の機会も作っていきたいという。

 

「『蜜月』以降、映像業界での性暴力が相次いで注目されました。でも、映像業界の一応は権威であるはずの日本映画監督協会は全く動こうとしません。これほど性被害を訴える声が相次いでも、声明すら出さないんです。

 

韓国では性暴力の問題が起きたとき、初代共同代表の一人をパク・チャヌクが務めたことで知られるDGK(韓国映画監督組合)が即座に声明を出し、性暴力防止委員会を発足させ、専門家による性暴力防止レクチャーを監督たちに受けさせたと言います。

 

日本の古い世代の監督たちには、映像業界で起きている性暴力事件の告発の重大さがわかっていないし、異常事態だという認識がないんです。この嵐が早く通り過ぎてくれないかと待っている節すらある。現実に被害者がいるという重さがわかっていない。今わからないのなら永遠にわからないでしょう。

 

だから『動かないんだったら別にいいよ』というスタンスでいいのかなと思います。問題点に気づいた人たちが動けばいい、と。この業界が改善するまでに長い道のりが待っているかもしれません。被害者の声に寄り添いながら、なくす会を進めて行きたいと思います」

出典元:

WEB女性自身

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