■特等席で葵がスーパースターになっていくのを見せてもらった
ドラマで葵をサポートした安田龍生さんはこうも語っていた。
「葵は、あれだけの短期間にすさまじい成長をした。僕は特等席で彼がスーパースターになっていくのを見せてもらったようなもの。今は、葵のほうが俳優としても上に行っているので、僕が追いかける立場。ゆくゆくは葵には主演をやってほしいし、そのときは僕も俳優として共演してみたいです」
葵と接する人の多くは、彼にスターの輝きを見いだす。
「テレビやドラマに出られたりするのは葵君自身の力ではあるけれど、すべての条件がそろっていないと。そのあたりは、ほかのスターと一緒」
というのは合唱団の吉村温子さんの言葉だ。
現実的には日本で放送されるテレビドラマや舞台で、ダウン症の役がそうあるわけではない。でも、エンタテインメントの本場アメリカをはじめ、世界に目を向ければ、ダウン症の人が主役のドラマや映画は珍しくない。カンヌ国際映画祭では最優秀男優賞を受賞したダウン症の俳優だっている。
それを伝えると、葵はかたわらの兄、父親、母親と順に顔をゆっくりと見回してから、
「はい!アメリカ、行きたいです!!」
つぶらな瞳が、力強く輝いた。