■伊藤沙莉から最後にプレゼントを渡され
裁判のシビアな場面の撮影が続いているときも、伊藤の天性の明るさに救われたと語る。
「緊張感あるシーンの本番を除いては、とてもずっと明るくて、太陽のように照らしてくださるんです。場の空気が自然とよくなりますし、みんな伊藤さんの笑顔に救われている気がします。僕の気持ちが沈みそうになる大変な場面であっても、伊藤さんのおかげで楽しい現場だと感じさせてもらいました。朝ドラの主人公って、絶対大変なはずなのに、伊藤さんは、疲れたそぶりを一切見せない。寅子のようにすごくカッコいい。僕も見習いたいと思いました」
無罪判決が言い渡されたあと、寅子、星、入倉は涼子(桜井ユキ)が営む喫茶店『ライトハウス』へ初めて一緒に食事に行く。そこで寅子とぶつかりあう場面では――。
「僕は、号泣しながら『佐田さんのことは小うるさいクソババアとしか思ってなかった』と、本音をぶつけると、寅子さんからも『差別主義者のクソ小僧!』と……。実はリハーサルのときは伊藤さんも僕も、この応酬にお互い笑ってしまいました。岡田さんはじめ、桜井さん、現場のスタッフさんたちみんなが笑顔を見せていたんです」
特に、正直な気持ちを吐露した入倉を寅子が諭す場面で、伊藤のすごみを感じたそうだ。
「目の表情が本当にまっすぐで、伊藤さんがまさに寅子と一体となり、迫力がありました。僕もぐっときて、入倉としての気持ちも引っ張ってもらいました。入倉は、若さゆえの未熟さというかケツが青いんですよね。そんな彼を最後は、伊藤さんも岡田さんも『入倉ってかわいいよね~』と、言ってくれてうれしかったです。岡田さんは『ここで(入倉)髪をかき上げたら笑っちゃうわ~』と言ってくれたことがありました。実際に、ある場面でやってみたら、本当に笑ってくださったのもいい思い出ですね」
“差別主義者のクソ小僧”という応酬から、寅子と和解した入倉。最後の撮影後、彼自身にも伊藤からうれしいプレゼントが待っていた。
「僕のクランクアップ後、伊藤さんが自らデザインされたトートバッグとTシャツとトレーナーをいただきました。伊藤さんに『デザインかわいいですね』とお礼を言うと『もらえた? よかった~』と安心されていました。トートバッグも、すごく気に入って今愛用しています」
それから2週間後、岡部が別の用件で再びNHKのスタジオに顔を出したときだ。
「伊藤さんが、『あれ、なんでいるの?』と声をかけてくれたんです。『岡田さん呼んでくるね!』と呼んでくださって。僕が、撮影の合間に見ていたカメラを実際に買ったことを伝えようとする前に、岡田さんが先に『ちょっと待って、それ、もしかしたらカメラ?』と気付いてくださったんです(笑)。最後に僕の新しいカメラで3人一緒に記念写真を撮らせていただきました。伊藤さん、岡田さんとご一緒させてもらったのは、本当に俳優としていい経験になりました」
くしくも父・たかしが和歌山から上京して劇団入りしたのは24歳。今の彼とほぼ同じ年齢だった。すでに舞台では共演している岡部父子が、いつか朝ドラ共演する日も来るかもしれない。