国分太一主演でドラマ化もされた『八神くんの家庭の事情』など、数々のヒット作を生み出してきた楠桂さん(59)。5歳年下の夫と結婚し、不育症と闘いながらも、2人の子供に恵まれた彼女を突然襲ったのは、20年以上連れ添った夫の“不倫発覚”だった。
「私の人生は、まるで罰ゲーム。こんなエンタメみたいにいろいろある人生でいいのか」と自嘲する、楠さんが明かした自らの“家庭の事情”とは――。
カリカリカリ……。墨汁を含んだGペンが線を描き、キャラクターに命が吹き込まれていく。
「私が漫画を描く作業の半分は、いまだにアナログ。ペンの音が心地よくて好きなんですね。紙に墨が落ちて、ホワイトで修正したりしていますけど(笑)。ペン入れをした原稿はスキャナーで取り込んで、色つけなどはパソコンで作業することが多いです」
漫画家の楠桂さんは、愛知県にあるアトリエで日々、創作を続けている。
楠さんといえば、テレビドラマ化された『八神くんの家庭の事情』や、舞台化・アニメ化された『鬼切丸』(ともに小学館)などの代表作があるが、現在、大きな反響を呼んでいるのがウェブで配信されている『サレ妻漫画家の旦捨離戦記』(大洋図書)だ。
夫からの突然の不倫告白、その愛人や姑まで同席しての凄絶な四者会談、といった実体験を赤裸々に描いているのだ。
「まさかここまでバズるとは! 予想以上の反響に驚いています。SNSのフォロワー数は3倍くらいに増え、Amazonの週間コミックランキングで1位に。レビューも1300件を超えました。もちろんコメントの全部が好意的な意見とは限りません。“同情されたいの?”“弁解できない相手を一方的に攻撃している”といった厳しいご意見もあります」
だからこそ、感情ばかりが先走らないよう、双子の姉で同じ漫画家の大橋薫さん(59)に、誰よりも先にネーム(漫画の下描き)をチェックしてもらい、客観的な視点を取り入れているという。
「昔から姉には最初にネームを見てもらっているんです。今回も『このセリフ、主語がない』『恨み節になっているけど、これで読者は楽しいかな?』など、意見してくれています。漫画には描けないので、(夫の)愛人とやり取りした録音データを聴き返すこともあります。当時の悔しさがよみがえってきて、執筆中に号泣したりするので、どうしても漫画に感情が入り込んでしまうんです」
身を削るようにして生み出した作品だからこそ、読者は引き込まれるのだろう。
「私の人生は、まるで罰ゲーム。こんなエンタメみたいにいろいろある人生でいいのかと思うこともあります(笑)。浮気“サレ”てよかったとは言いませんが、ふつうなら埋もれてしまうような、片田舎の熟年夫婦の不倫・離婚話で読者が楽しんでくれるなら、まだ救いがあるというものです」
振り返ると、物心ついたときから、ずっと漫画を描き続けてきた半生だった。
