美輪明宏が「天才」と評するアーティスト・田村大 無名のころからブレない“こだわり”
画像を見る 世界中からオファーが絶えないアーティスト・田村大さん(撮影:松蔭浩之)

 

2017年に退職し、2018年に独立、フリーランスの道を選んだ。

 

「似顔絵だけでは物足りなくなってもいたんです。次のステップに進むために、過去を断ち切らなければと、似顔絵世界一のトロフィーそのものを捨てちゃいました」

 

輝かしい栄誉まで、部屋の片隅のゴミ箱に潔くシュートしてしまったのだった。

 

フリーになってほどなく、ある日田村さんが描いたイラストが、当時NBAの独占配信権を持っていた楽天株式会社の三木谷浩史社長の目にとまったことをきっかけに、NBA公認イラストレーターの肩書をもつことに。そこから新しいタッチを確立させていった。

 

NBAのお墨付きを得てからは、トップアスリートや世界的アーティストからも「描いてほしい」というオファーが直接届くように。

 

また、創業100年を誇る京都の書画専門店に見出され、日本画のエッセンスとの融合も実現。新境地を切り開き、2025年春には、東京都港区にある増上寺で、個人の画家としては初となる個展を開催した。

 

大さんの母・幸代さんが言う。

 

「増上寺の展覧会は素晴らしいものでした。いつかニューヨークで個展を開きたいという構想もあるそうなので、そちらもぜひ見に行きたいですね。ただ夫の体調が心配で……」

 

父・元信さんは、2年前に難病「特発性間質性肺炎」の診断を受けていた。

 

「一時は常に酸素ボンベが必要なほどでした。いまはだいぶ落ち着いていますが、呼吸に不安があるため、気圧の関係で飛行機には乗れないんです。でも大の海外の展覧会は絶対に見たい……。この際、思い切って豪華客船で行こうか」

 

幸代さんに語り掛ける元信さん。世界中を魅了する田村大の絵は、最高の親孝行でもあるのだ。

 

増上寺で展示された絵が挿絵として掲載されている美輪明宏さんの新『令和を生きぬく貴方たちへ』。その最後の章「夢」には、こう書かれている。

 

《どうしてもそんな夢を描けないという人は、焦る必要はありません。ゆっくりあなたの夢を探してください。夢を見るのに年齢は関係ありませんから。

 

そして、その間に誰かの夢をかなえるお手伝いをすればいいのです。「あの人の夢をかなえたい!」あなたがそう考えることで、実はあなた自身の夢も実現に近づいているのです》

 

本当の夢を見つけるために、一見遠回りをしたようにも思える田村さんだが、その経験は、すべてがいまに通じている。田村さんは、美輪さんに対面した日のことを興奮気味に話す。

 

「ご自宅に飾られた数々の美術作品を前に“美意識”について貴重なお話をいただきました。美しさとは何か? 何より大事なのは、その基準を他人ではなく自分で決めるべきだ、ということも」

 

別れ際、美輪さんは田村さんにハグをして、玄関まで見送ってくれた。そのとき、とても力強いハミングが聞こえてきたという。

 

「明るい曲調で、なんだか心が温かくなるようなメロディーでした。そして美輪さんはきらきら星のポーズのように手をヒラヒラさせると、にっこり笑顔で僕に『一緒に!』と、同じポーズを促してくださったんです」

 

才能あふれるアーティストの“輝く未来”を思い描いた美輪さんが、エールを送ってくれたのだ。田村さんが「元気をいただきました」とお礼を言うと、

 

「それが私の役目だから──。近いうちにまた会いましょうね」

 

田村大の作品が放つ輝きが、今日も世界中のどこかで、見る人の心を動かしている。

 

【後編】世陸金メダリストも絶賛のアーティスト・田村大 飛躍かなえた“カリスマ経営者”への「無謀なアプローチ」へ続く

 

【INFORMATION】

 

美輪明宏が「天才」と評するアーティスト・田村大 無名のころからブレない“こだわり”
画像を見る 新刊『令和を生きぬく貴方たちへ 未来世代が輝くミワちゃま語り20』

 

発売:2025年9月22日(月)
発行:光文社
価格:2,200円(税込)
https://www.amazon.co.jp/dp/4334107591/

 

画像ページ >【写真あり】アディダスドイツ本社から依頼された「東京2025世界陸上」出場選手のイラスト(他4枚)

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