■周囲の無言の気遣い——髪とともに自信も仕事も奪われていった
20代はさまざまなヘアスタイルに挑戦し、まさに日本のファッションアイコンとして脚光を浴びていた壱成さん。しかし30代後半ごろから、徐々にその頭髪に変化が現れ始める。
決定的に薄毛を自覚したきっかけは、周囲からの“無言の気遣い”だったという。
「何も注文してないのに、メイクさんが生え際を隠すようにピンを留めるようになったり、馴染みの美容師さんも、後ろから前に髪を持ってくるカットスタイルにしたりと周囲から気をつかわれるようになったんです。
若い頃によくヘアスタイルの雑誌で特集されるような身だった僕としては、ヘアスタイルがもう完全に一つしかできなくなってしまったことは非常にショックでした」
薄毛が進行するにつれ、壱成さんは帽子を常用するように。宣材写真やテレビ出演時にも帽子で隠すようになった。当時は、突然の風で額の広さが露わになることすら恐怖だったと振り返る。
「つねに頭を隠しているとどんどん自信もなくなっていくんですよね。その自信のなさで仕事に対してもどこか消極的だったりとか、以前は溢れるように湧き出していたアイデアも枯渇してしまっていました」
そんな折、出演したあるバラエティ番組の現場で、壱成さんはあまりにも残酷な現実に直撃することになる。
「僕に対して『きゃー!キモい!』って悲鳴が上がったんです。それから、そのキモキャラが変にバズってしまって、もうどこに出て行っても『ハゲ!』『キモい!』って言われるように……。
でも自分でもそう思いました。確かに顔色も悪いし、頭はハゲてるし、上手く喋れないし。
主演の舞台のお仕事をもらっても、頭の薄毛が気になってとにかく自信がないんです。自分は、画面に映る人間ではない。芸能界にいるべき人間ではないと思いました。
精神的にもどんどんやられてしまい、顔面麻痺も起こっていたので、事務所の社長に『ごめんなさい、もうできません』と伝えて芸能界を辞めることを決意しました」
2018年、以前から拠点を持っていた石川県へと完全移住した壱成さん。だが、どん底の状況は一向に好転しなかった。うつ病が悪化してさらには離婚も重なるなど、暗闇の中での苦悩は容赦なく続いていった。
