「基本のメニューは、白いご飯にキムチと肉料理、サラダ、チゲなど7種のおかずを用意した、日替わりのバイキングです。そのほか、韓国餅を炒めた『宮中トッポッキ』、『ソーセージのチヂミ』、鶏肉と野菜の鍋料理『タットリタン』などが、韓流STARに人気のメニューです」と話すのは、ソウルのケータリング会社『全州パプチャ』代表の、チェ・スヨンさん。社名の“パプチャ”は韓国語で「移動式食堂車」の意。‘00年に同社を創業したチェさんは、食材満載の“パプチャ”で全国各地のロケ現場を駆け巡り、韓流STARの舌を唸らせてきた料理人だ。これまでに参加した作品は、ペ・ヨンジュン(35)の『四月の雪』や、イ・ビョンホン(37)の『夏物語』など、話題作を中心に150本以上!現在、フジテレビ系で放送中のドラマ『朱蒙』のロケにも同行を依頼される人気ぶりで、現場では、チェさんの料理を心待ちにしている“常連客”も多いという。

“パプチャ”が韓国に登場したのは、‘90年代後半のこと。「それまでの“ロケ弁”は、仕出し弁当や菓子パン、海苔巻きなどが主流でしたが、温かいご飯をいつでも食べられる“パプチャ”は、出演者やスタッフにも大好評です」と韓国在住のライター、川村幸江さん。「衛生的でメニューも豊富ですし、みんなでオープンキッチンを囲み、和気あいあいと食事をするスタイルも、人気の秘訣のようですね」現在、“パプチャ”を運営する会社は、韓国に約100社。そのなかでも、「食の都」として名高い、韓国・全州出身のチェさんが切り盛りする“パプチャ”は、本場の家庭料理が味わえることで有名だ。「ロケ現場では、全州料理のほか、出演者やスタッフの年齢層、また、季節を考慮したメニューを提供しています。たとえば、黄砂の季節は、『喉の埃を取り除く作用がある』とされる、豚肉料理の『サムギョプサル』を。夏は、さっぱりした『豆乳冷』や『フルーツサラダ』をメニューに加えています」味に敏感な韓流STARのために、化学調味料はいっさい使わず、海外ロケにも、韓国産の唐辛子やコチュジャンを持参するこだわりよう。
ときには、出演者のリクエストに応えて“裏メニュー”を提供することもあるそうだ。「映画『甘い人生』の現場では、イ・ビョンホンさんから、夜食に『すいとん』をリクエストされたことがあります。韓国には、寒い日や湿気の多い日に『すいとん』を食べる習慣があるんですよ。また、激しいアクションで消耗した体力を回復させるために彼は、休憩のたびに菓子パンを口にしていました」とロケを振り返るチェさん。「夜食を食べながら、真剣な表情でモニターに見入るビョンホンさんの姿が、いまでも印象に残っています」

また、ドラマ『朱蒙』のロケでは、ソン・イルグク(36)に関するこんなエピソードも。
「イルグクさんは“ベジタリアン”と言われていますが、野菜を中心としたメニュー以外にも、こちらで用意した料理は何でも食べてくれました。『朱蒙』もアクションシーン満載のドラマですから、体力維持のために、とにかく、よく食べていましたね」彼自身も韓国紙の取材に、「『朱蒙』のロケでは、たくさん食べすぎて太ってしまいましたが、韓服姿での撮影だったので、体のラインが目立たずに助かりました(笑)」と語っていたほど。ロケ現場では、ファンが差し入れた、野菜中心の弁当を食べることもあったそうだ。
彼と同じく、ロケ現場で野菜中心の食事を心がけていたのは、映画『王の男』のイ・ジュンギ(25)と、今年のカンヌ映画祭で主演女優賞に輝いたチョン・ドヨン(34)。「お2人の食事は基本的に、大量の野菜サラダがメイン。お米はまったく口にしませんでしたが、ジュンギさんは、ときどき好物のトッポッキを食べることもありました」現在は、ヨン様主演の『太王四神記』のロケ現場で、料理の腕を振るうチェさん。食事にまつわる、ヨン様のエピソードを聞くと……。「残念ながら、ヨンジュンさんが“パプチャ”で食事をすることはめったにありません。ヨンジュンさんはファンへの影響を考え、専用の車や人目につかない場所で食事をすることがほとんどなのです」
ヨン様は、“家族”から差し入れられた弁当で“一人メシ”をすることも多いそうだ。
このように、飲食店の少ない地方ロケで“パプチャ”が活躍する一方、都市部やスタジオでの撮影では、付近の飲食店や、出前で食事をすませることも。「韓国では、ピザはもちろん、ジャージャーやビビンバなど、どんな料理でも一人前から配達してもらえます。自宅やオフィスだけでなく、たとえ公園であっても、必ず指定の場所に届けてくれるので、とても便利なんですよ」と前出の川村さん。「また、ファンや出演者が、現場に大量の差し入れをしてくれることも多いため、ロケ現場で食事に苦労することは、ほとんどないようですね」
ドラマ『天国の階段』や『輪舞曲』の出演で日本のファンも多いシン・ヒョンジュン(39)は、『焼き肉』80人前を。イ・ジュンギは、鶏を丸ごと一羽使った『サムゲタン』100人前を、それぞれが出演する作品のロケ現場に差し入れ、共演者やスタッフを大いに喜ばせた。「韓国人は『お食事はなさいましたか?』というフレーズを挨拶代わりに使うほど、食事の時間を大切にしています。温かいご飯を大勢で食べることは、親睦を深めるための重要なツールのひとつと言えるでしょう」(川村さん)韓流STARの原動力となっているのは、愛情たっぷりの熱々ご飯と、仲間と囲む食卓にあるようだ。

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