■“保守派”からの支持を固める狙いが
まるで“欺瞞”のような岸田首相の姿勢だが、なぜ今国会で皇位継承問題についての議論を加速すると打ち出したのか。現在、自民党が議論を進める“前提”としているのが、2021年に政府の有識者会議が取りまとめ、国会に対して提出された報告書だ。
前出の宮内庁関係者は、
「報告書では、戦後に皇室を離脱した旧宮家に連なる男系男子を養子に迎える案、女性皇族が結婚後も身分を保持できる“女性宮家の創設”という案が示され、国会で議論されるはずでした。しかし岸田政権の旧統一教会問題や物価高対策への迷走ぶりにより、岸田総理や自民党に対して世論の風向きは厳しく、とても着手できる状況ではなかったのです。
皇室が直面している課題に対して、岸田総理が関心を持っているという話は聞いたことがありません。最近になって所信表明演説や委員会での答弁で発言しているのは、皇室の問題に関心が強い党内保守派の政治家と有権者へのアピールにすぎないと思います。岸田総理による“皇室利用”と批判されても仕方がないでしょう」
政府と自民党が前提としている有識者会議の報告書の内容で議論が進むことに警鐘を鳴らすのは、元最高裁判事の園部逸夫さんだ。園部さんは、2005年に“女性・女系天皇を認める”という提言を行った、小泉政権時に設置された政府有識者会議の座長代理も務めている。
「このままでは皇室がなくなります」と語り、こう続ける。
「現在の制度では、天皇陛下、秋篠宮さまに続く皇位継承資格者は、悠仁さまお一人です。しかし将来、悠仁さまが結婚されても、男子がお生まれになるかはわかりません。皇統を維持するためには、女性・女系天皇を認めることを否定できないのに、政治家は誰も言い出さないのです。
また女性皇族は結婚によって皇室を離れなくてはならず、皇位や宮家当主も女系による継承が認められない制度のままでは、皇族数の減少に歯止めがかかりません。
本来、悠仁さまご誕生後も、皇室の安定のために何が必要なのか、議論を止めるべきではありませんでした。歴代内閣や国会がその責任を放棄してきたために、皇室の危機は深まり続けています」
そして雅子さまにとっては、岸田政権の怠慢によって、愛子さまの自主的な意思に基づく将来を決められない状況が長引くことにほかならない。
「岸田総理は、いわば“形だけ”の新組織を立ち上げ、皇室が直面している問題を先延ばしにしようとしています。
今後、愛子さまが結婚を決められ、皇籍を離脱することになったときに、皇室の存続が危機に瀕している状況に変化がなければ、愛子さまのご選択に対して政治家から異議を唱える動きが生まれないとは言い切れません。
そうなったときも雅子さまは、愛子さまのご意思に寄り添い、全力で守られようとお気持ちを固めていらっしゃるのでしょう」(前出・宮内庁関係者)
晴れやかな園遊会で、一瞬見せられたご表情には、“愛子を守る”という雅子さまの決断が秘められていたからだったのか。