雅子さま 令和の“慰霊の旅”がついに始動…硫黄島ご訪問に秘められた“戦争を知らない世代”へのメッセージ
画像を見る 2012年7月、硫黄島島民平和祈念墓地公園で開かれた追悼式で拝礼する遺族ら(写真:時事通信)

 

■硫黄島島民の子孫と訪問される意義

 

政府は火山活動などを理由に、定住は困難という見解を示しており、元島民や子孫らの帰島は実現していない。現在、原則的に硫黄島に立ち入れるのは、基地を置く自衛隊、国や都の関係者のみだ。

 

歴史学者で静岡福祉大学名誉教授の小田部雄次さんは、天皇陛下と雅子さまのご訪問の意義について、次のように語る。

 

「硫黄島などの太平洋上の激戦地は、一般国民の訪問が難しい場所です。そうした場所に刻まれた悲惨な歴史が、時間の経過とともに国民の意識から希薄になってしまう懸念があるなか、両陛下のご訪問が注目されることで、後世に伝わっていくという意義は大きいのです。とくに戦後生まれの両陛下からは、積極的に戦争の記憶と記録を広く国民に意識させようというご姿勢、平和への願いを感じます」

 

両陛下の今回のご訪問には、高齢となった元島民に代わって、彼らの子孫が同行する「全国硫黄島島民三世の会」会長の西村怜馬さん(43)もその一人だ。西村さんの祖父母は、強制疎開で島を離れている。

 

元島民の子孫は“島民一世”である祖父母たちから、記憶を受け継ごうと活動を続けているという。

 

「島民三世の仲間たちと仕事の合間に、まだご健在の島民の方々にインタビューをしています。それを後世に語り継ぐことは、今後も私たちが続けていかなければならないと考えています。

 

上皇ご夫妻が訪問されたとき、一緒にニュースを見ていた祖母はうれしそうでした。戦後50年を控えた当時、硫黄島のことが忘れ去られていく中でのご訪問だったからだと思います。その日都内は雪が降っていましたが、祖母が『島は暖かいんだよ。セーターなんて着たことがなかった』と語っていたことを、子供心に覚えています。

 

天皇皇后両陛下は今回、島民平和祈念墓地公園を訪問されますが、硫黄島島民三世の私たちともご懇談いただけるとのことで、とてもありがたく感じています」

 

西村さんの祖父母の弟たちは軍属として徴用され、硫黄島の戦いで犠牲となっていた。

 

「生き残った方から、大叔父たちは上陸してきた米軍の偵察部隊の銃撃で亡くなったと聞きました。本格的な戦闘が始まる前だったのでいったん埋葬されたそうですが、遺骨は見つかっていません。埋葬されたのは、遺骨収集事業の対象地域なのですが……。

 

一昨年、私は遺骨収集事業の予備調査のために島に9日間滞在しました。夜になって空を見上げると、息をのむほど美しい満天の星が広がっていたのです。いつも祖父母から、自然豊かで、穏やかな硫黄島の暮らしぶりを聞いてきましたし、もう二度と平和が奪われてはならないと、そのときに強く思いました」(西村さん)

 

両陛下による6月の沖縄ご訪問には、愛子さまも同行されるという。戦争を知らない世代、そしてこれから生を受ける世代にも……。今も戦争や紛争が続くこの世界に、雅子さまは硫黄島から、非戦の輪を広げようとされている。

 

画像ページ >【写真あり】1994年2月、硫黄島の「鎮魂の丘」の碑に献水される上皇ご夫妻(他11枚)

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