ホールに天皇陛下と雅子さま、そして愛子さまが入場されると、集まった観衆から盛大な拍手が起こる。12月19日、天皇ご一家は東京都内の新国立劇場で開かれたバレエ『くるみ割り人形』の公演を鑑賞された。
ご一家そろってのお出ましは約1カ月ぶりとあってか、両陛下と愛子さまの明るいご表情が、劇場のうす暗い照明のなかでもひときわ輝いて見えた。そして雅子さまの安堵に満ちた表情は、このほかにも理由があったと、宮内庁関係者は明かす。
「同日に、政府は24日付での宮内庁長官の交代人事に関する閣議決定を行いました。定年のない宮内庁長官は70歳前後の退任が慣例で、その年齢となった西村泰彦さんが勇退し、新たな長官と次長が着任することが決まりました。
宮内庁の最高幹部であり、そして最側近の陣容が固まったとあって、雅子さまも一安心されたのではないでしょうか」
長官に昇格したのは、黒田武一郎氏(65)。1982年に自治省(現・総務省)に入省し、熊本県副知事を務めたほか、消防庁長官なども歴任。2019年には総務審議官、同省トップの総務事務次官に上りつめた。宮内庁次長には2023年12月に就任しているが、どのような人物なのか。皇室担当記者はこう語る。
「どんな記者にも話を合わせることができる、何より人柄がざっくばらんな方。調整能力が高く判断も早いので、職員の多くがすでに頼りにしているようです。剣道高段者の猛者で、時には厳しい口調で指摘するとも聞きます。とはいっても、副知事時代に暮らした熊本を舞台にした小説を2005年に出版したこともあるように、意外な人情家の一面にほだされる人は少なくないそうです」
実は黒田氏は高市早苗首相(64)と“近しい官僚”でもある。高市氏は2014~2017年、2019~2020年に総務相を務めており、黒田氏が部下だったのだ。霞が関の事情に詳しい「インサイドライン」編集長の歳川隆雄さんは次のように話す。
「黒田氏は省内で“四羽烏”と呼ばれていた実力者の一人で、高市さんが総務相を務めたときに事務方として支えてきました。
かねて高市さんは霞が関官僚の人脈が狭いといわれてきましたが、数少ない頼れるキャリア官僚の一人です。じつは高市政権発足後、官僚機構のトップである事務担当の官房副長官の候補として、黒田氏の名前が挙がった経緯もあるほどなのです。
ただ黒田氏はすでに宮内庁次長に着任していました。次長は長官昇格を含んだ辞令とされており、黒田氏は受けた時点で以降のキャリアとプライベートを皇室に捧げる覚悟で臨んでいたようで、結局、副長官就任はかなわなかったと聞いています」
官僚としての栄達よりも、残りの生涯を皇室のために支えるという覚悟で、両陛下の最側近となる黒田氏。直面しているのは、皇族数の確保策を巡る国会の議論の停滞だ。2022年1月から始まったこの議論は、女性皇族の結婚後の身分保持案、旧宮家に連なる男系男子に限った養子縁組を可能にする案の2つを軸に、衆参両院の議長が取り仕切る形で進められてきた。
「女性皇族の身分保持案」はおおむね賛同を得る形となったが、その配偶者と子も皇族とするか否かで、各党の意見は一致していない。また自民党などが主張する「養子案」も賛否が割れたままなのだ。前出の宮内庁関係者はこう嘆く。
「2025年の通常国会、さらに臨時国会でも、与野党の溝は埋まらず、すでに合意の取りまとめは2026年以降になるとみられています。最終的に皇室典範改正に向けての議論を深めるはずが、自民党と日本維新の会、立憲民主党などといった与野党の駆け引きが先行して繰り広げられているのです」
