■高市政権が懸念する両陛下の影響力
両陛下が下した異例のご決断。その一方、高市首相率いる自民党が憲法改正へと突き進む現状こそが、式典での両陛下のおことばが“封殺”されたことの背景にあると、前出の自民党関係者は語る。
「憲法改正は自民党結党以来、どの総理も成し遂げたことがない目標です。高市総理は5月3日、改憲派の集会に“日本人の手による自主的な憲法改正は自民党の党是だ”とビデオメッセージを寄せていて、自身の任期中に成し遂げたいと本気で考えているようです。
いま議論されているのは、大規模災害時に国会の機能を維持する『緊急事態条項』の創設などのテーマですが、自民党の政治家の多くが“本丸”としているのは憲法9条の改正です。平和主義と戦力の放棄を掲げる9条をどのような形にするべきなのか、さまざまな議論が交わされています。
そうした状況下で、陛下のおことばが与える影響は、政権幹部の想定を超えた規模に広がるかもしれません。こうした懸念から、官邸の幹部たちは昭和100年式典で、陛下がおことばを述べられるご機会を設けなかったのではないかとみる向きもあるのです」
静岡福祉大学名誉教授で歴史学者の小田部雄次さんは、両陛下のご姿勢に次のような印象を抱いたという。
「式典後に宮内庁を通じて明らかにされたメッセージに、両陛下の思いが十分に込められていたという印象を持ちました。
天皇陛下の祖父にあたる昭和天皇は、戦前戦中は現人神とされ、国家元首、帝国陸海軍の大元帥だったことは歴史的な事実です。しかしかつての戦争への深い思いから、戦後の日本国憲法の成立への支持、そして象徴としてのあり方を重視してきました。
陛下は昭和天皇や上皇さまと同じように、戦前との連続性よりも、戦前戦中の悲惨な体験や労苦を乗り越えようとしてきた戦後の人々に寄り添おうとなさっていることが、式典後の宮内庁の発表からも拝察できるのです」
陛下は昨年8月15日の全国戦没者追悼式で、「戦中・戦後の苦難を今後とも語り継ぎ」とこれまでにない表現をおことばに盛り込まれていた。小田部さんはこう続けた。
「陛下と雅子さまは戦後生まれの世代として“後世に語り継ぐ”ことを重視なさってきました。戦前を美化し、軍隊の復活や市民権の制約といった意図があるようにも感じてしまう自民党政権の姿勢と、平和を希求する皇室のスタンスとの間に、微妙な差異があると国民が感じてしまうこともあるでしょう。
陛下は政治的な発言は一切できません。だからこそ政府が主催する昭和100年記念式典へのご臨席に際して、どのようなメッセージを込められるのか、両陛下は考え抜かれていたのだと思います」
米国とイランの軍事衝突によって起きているホルムズ海峡の封鎖。世界の戦争が生活を圧迫する現実が人々に突き付けられているいま、両陛下はたとえおことばを封じられようとも、平和を守る行動を止められることはない。
画像ページ >【写真あり】式典で演奏にあわせてノリノリな高市首相(他14枚)
