立川や町田といった後発の近郊都市の近年の発展で、最近少し元気がない八王子の街。それでもお昼どきや休日には50近くの席が満席になる「竹の家」。長年の常連とおぼしきお年寄りから家族連れ、一人で来ている若い女性の姿も意外に多い。 「30年ぶりとかに来てくれるお客さんが『変わらないね!』ってほめてくれると、ああこれでいいんだなって思える。変えてるんですよね。『変わらない』っていうのは、『おいしい』ってことなんですよ。本当に何も変えない昔と同じ味だったら、お客さん舌肥えちゃってるから、おいしく感じない。『味が落ちた』って言われちゃうんです」 味についての話を始めると止まらなくなる正和さん。2分でゆであがるオートボイル機に合わせて、麺は2分~2分15秒で「アルデンテになるように」製麺所に発注。チャーシューやメンマへのこだわりもすごい。 「肉は噛むと味が出るんだから、チャーシューもある意味ダシのひとつですよね。だからやっぱりスープをよく吸うモモ肉。少しやわらかいのが欲しいなら、バラじゃなくてもモモにもそういう部位はありますから、チャーシュー麺にはその肉を使ってますね」 そして「竹の家」の一番人気のメンマラーメン。コリッとした歯ごたえの秘密は自家製法。米袋や小麦粉なみの特大の袋に入った乾燥メンマが事務所にドカンと置いてあった。 「釜で2日かけてもどしてます。圧力釜だともっと早くできるけど、歯ごたえがやっぱりね。おじいさんがメンマにはこだわり持ってたから、厚さから長さから台湾や中国に発注して、3~4種類ある品種から選んで…」