「腰痛になって、最初は立つことも歩くこともできなかったです。なんとか歩けるようになっても、半年ぐらいは腰が曲がったおじいちゃんのように歩いてました」

 

こう話すのは、ダチョウ倶楽部の「リーダー」こと、肥後克広(50)。彼が腰に異変を感じたのは、芸人デビュー前の修行時代、20代前半のことだった。あるとき突然、腰に激痛が走り、まったく動けない状態となってしまったのだ。病院での診断は、急性椎間板ヘルニア。医師から告げられたのは「1週間後に手術しましょう」の言葉だった。

 

「でも、椎間板ヘルニアで手術した先輩が身近にいて『手術しても再発したりするから、できるならしないほうがいいんじゃないか』とアドバイスされて。そのときは手術しなかったんです」(肥後・以下同)

 

そこから、彼と腰痛の長い付き合いが始まることとなる。最初はカイロプラクティックに通い、コルセットを巻くことでなんとかやり過ごすことに。完治こそしなかったものの「腰の曲がったおじいちゃん」からは抜け出すことができた。

 

「歩き方も、類人猿から人間くらいには進化しました(笑)。それで、おカネもかかるし、カイロプラクティックに通うのはやめて、腰痛といい距離感で付き合っていこうと。このころは、腰痛はもう治らないとあきらめてましたね。でも、まったく起きることもできなかった人間が、起きて歩けるようにはなった。多少の傷みやしびれがあっても、それだけで十分だと思っていましたよ」

 

こうして20年以上、ダチョウ倶楽部のお家芸ともいえるハードな仕事の数々を、腰痛という爆弾を抱えながらこなしてきた。そんな「腰は痛くて当たり前」という生活を送っていたリーダーが出合ったのが、簡単な体操などで腰痛を治していく「マッケンジー法」という治療法。担当したのは、御茶ノ水整形外科機能リハビリテーションクリニック院長の銅冶英雄先生。銅冶先生のカウンセリングに従い、リーダーは腰痛とあらためて向き合うことを決意する。まず勧められたのが、「寝て腰を反らす体操」だった。

 

【寝て腰を反らす体操】

(1)ベッドにうつぶせになる。両足は肩幅より広めに開く。両手は両脇に置く。(2)両肘を伸ばし、上体をゆっくりと反らす。反らしたらなるべく腰と足の力抜き、両肘が伸びきったと感じたら、ゆっくりと体を戻す。10回1セットにして3時間おきくらいに。

 

「ストレッチは体に負荷をかけるので、意外とキツいんですけど、これは楽でしたね。『体操って呼んでいいの?』っていうくらいの簡単さだったんで、努力が苦手な僕のような人間にはぴったりでした。それを毎日続け、月に1回ほど通院して、カウンセリングを受けました。すると、3~4カ月で痛みや違和感がなくなった実感が出てきて。半年続けたころには、もう8~9割は治った実感がありました」

 

ストレッチのように筋肉を伸ばすのではなく、関節を適切な方向に動かし、ゆがみを取ることで痛みを改善していく。その人に適した体操を続け、自分で治す習慣をつけるというこの治療法で、リーダーは腰痛を克服した。

 

「これまで腰を気にしていたので、重いブーツは敬遠して、スニーカーしか履けなかったんです。それが今は普通にブーツが履けるようになって。腰痛は“樹海”みたいなもので、抜け出せない人はたくさんいると思います。でも、どこかに必ず自分に合った治療法が絶対あると思うんで、あきらめないで探してほしい。僕も樹海で暮らしていこうと覚悟していましたが、あきらめないで本当によかったと思います」

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