小中学生から始まる不登校や引きこもりが年々増加する傾向にあります。その裏には精神的にダメージを受けた心の病が隠れていることも…。放って置くと将来休学や休職でずっと引きこもってしまう深刻なケースに発展する可能性が大きいといいます。あなたのお子さんに、こんな症状はありませんか?

環境が変わる休み明けが危ない

「春休み、ゴールデンウイークなど長いお休みの後がいちばん危ないのです」と教えてくれたのは新宿メンタルクリニックの川口佑院長。

休みの間は元気に遊んでいたのに、学校が始まったら起きられなくなったという症状を訴える子は意外と多いのだといいます。

「あれほど活発に遊び回っていたのに…おまけに夕方からどんどん元気になるなんて」親や学校側から見ると「たるんでいる」「なまけている」以外の何ものでもないこんな状態、実は本人も訳がわからなくて悩んでいます。

「自分でもどうして起きられないんだろう。何でこんなに学校に行きたくないのだろうと不安になっているのです。そこで親から小言を言われたりするので、よけいに不安でいっぱいになってしまうのです」と川口先生。

 

「検査をしてみると、双極性Ⅱ型障害を患っているお子さんもけっこういらっしゃいます。双極性というだけあって、元気なときは本当に元気で明るいのに、マイナスになってしまうと別人のように落ち込んでしまいます。本当に周囲も自分も驚いているのがよくわかります。また感受性が鋭く、周りの人の何気ない言葉を健常な人の10倍くらいマイナスに受け取ってしまうという傾向があります。周囲の人にはわからないところでとても深く傷ついて学校に行けなくなったりするのです」(川口先生)

 

昔は躁鬱(そううつ)病と呼ばれていたという双極性障害。季節や天気など自然の変化の影響も受けやすい病気です。Ⅱ型は比較的軽度なので、治療を早く始めれば早く回復できるケースが多いといいます。

こんな症状がないか注意!

① 休みの間は元気に遊びまわっていたのに、学校が始まったら朝起きられなくなった

② 突然、学校に行けなくなった

③ 活発なときもあり、はきはきとおしゃべりで食事も忘れるほど何かに夢中になることがある

④ 元気な時は自信にあふれ、多動になる

⑤ 朝は起きられないけれど、夕方になると普通に行動できるようになる

⑥ 睡眠時間が以上に長い

⑦ 友達と出かけるのを嫌がっていても、出かけてしまうと普通に遊べる

⑧ 他人の言葉にとても敏感でマイナスにとらえやすい傾向がある

 

「診断としては、2つ以上あてはまる項目がある場合、一度検査を受けることをおすすめします」(川口先生)。

確実に症状を見分ける検査

従来、このようなメンタルが不安定な状態は問診によって医師の経験値と一定のマニュアルにより病気かどうかの判断がされていました。

 

川口先生によると医師の経験の中で最近のように若年層、子供さんを扱うケースはほとんどなかったので見分けるのが困難なのだとか。

「気のせいじゃないですか?もう少しご家庭で様子を見てくださいと言われて、症状が悪化してしまうという場合もあるのです。軽度とはいえ、放っておくとお子さんの将来に大きな影を落とす可能性があります。

 

躁状態の波が来て、再び学校に行けるようになり、なんとなくよくなったと思ってやり過ごしてしまうと、大学生になったタイミング、就職して社会人として働きだしたころに、本格的なひきこもりになってしまい、社会に適応できず、何年も何年も家から出られないという生活を送るという事態も考えられます。

 

実際、そのような状態に悩んでいる成人の患者さんに伺うと、子供のころに不登校になった経験をお持ちの方も少なくありません。

 

当クリニックでは病気かどうかの診断をはっきり見極める光トポグラフィーという検査方法を導入しています。これなら脳の血流の変化を見ることで、うつ傾向であるか、統合失調であるかなどの診断が客観的にできます」

(川口先生)

 

医師の個人的な主観に頼るのではなく、脳の血流の状態などのデータによる診断なので親御さんも、お子さん本人も原因が明らかになり安心して治療に取り組めますね。

「少しでも不安があったら、まず検査だけでも受けることをおすすめします。環境の変化や長い休みの後で自律神経が少し乱れただけか、本当に治療が必要な病気なのかわかるだけでも不安は払拭されるものだと思います」(川口先生)

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新宿メンタルクリニック院長
米国臨床TMS学会会員
川口 佑先生

薬を使わない治療

では双極性Ⅱ型障害と診断された場合、どのような治療をされるのでしょう。

「一般には抗精神薬を処方しますが、このような薬には副作用が本当に多いのです(イラスト参照)。なかには未成年、小学生の児童に飲ませるのは危険な薬もあります」

(川口先生)

 

いくら精神的な安定を取り戻すためとはいえ、こんなに多くの不快感と闘わなくてはいけないのは幼い子供さんたちにとってあまりにも過酷なことですね。

「はい、実際に児童には使用を禁止されている薬もあります。でも効果があるからと処方する医師もいると聞いています」(川口先生)

 

何かほかに方法はないものでしょうか?

「今、このような薬を使わない治療法が注目され始めています。磁気刺激(TMS)を使って治療をするもので、アメリカで開発され、当クリニックでもよい治療成果を実感しています。1回40分、30回の磁気治療を行うのですが年齢が低いほど治療効果ははっきり早く表れます。なかには十数回で完治するケースもあります。薬のような副作用もないので安心して治療を受けていただけます」

(川口先生)

 

副作用がない治療なら子供さんでも安心して受けられますね。放っておくと、将来深刻なうつ病になってしまう芽を早期発見。子供さんの未来のためにも早めにケアしたいものですね。

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取材協力/新宿メンタルクリニック http://www.shinjuku-mental.com

 

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