「生活習慣が原因で、血糖値が高くなりすぎて下がらない2型糖尿病(以下・糖尿病)。戦後からずっと患者数が増え続け、’16年に初めて1,000万人の大台に乗りました。予備群を含めると、2,000万人以上になります。もはや誰もが糖尿病になりうる時代なのです」
そう話すのは、筑波大学医学医療系内分泌代謝・糖尿病内科の矢作直也准教授。40歳以上の女性、4人に1人が予備群以上といわれる糖尿病。症状がないまま進行し、発病すると完治は難しい。糖尿病になる前の“糖尿病予備群”なら、しっかり予防すればまだ間に合うという。食事面では糖質制限食も話題になっているが……。
「“糖質以外は何を食べてもいい”という糖質制限食が流行しています。短期間の体重や血糖のコントロールが目的であれば有効ですが、長期的に見ると疑問です」(矢作先生)
糖尿病の食事療法に詳しい矢作先生はこう語る。
「実は、糖質制限食は、新しい考え方ではありません。インスリンが発見される1920年代までは、糖質制限が糖尿病治療の柱。それ以降も何度となくブームが起きては、さまざまな弊害が生じているのです。最近では、糖質制限をした場合の心血管疾患のリスクを調査した結果、心血管疾患による死亡率は増加したという報告もあるのです」(矢作先生・以下同)
ほかにどんな疑問点が?
「砂糖や果物に含まれている単純糖質は、急激に血糖値を上げるため極力、摂取を控えるべき。しかしごはんやパンに多く含まれているでんぷんなどの複合糖質は、比較的、血糖の上昇が緩いため、必要量を食べても問題ありません」
それでは“糖尿病予防群”にならない食事とは。
「エネルギーになる三大栄養素はタンパク質を15〜20%、脂質を20〜25%、糖質を50〜60%のバランスを守って食べてください。血糖値の上昇を防ぐなら、主食、主菜、副菜などを少しずつ減らして総摂取カロリー量を抑えることが重要です。予備群になりたくない人は、ごはんやパンを、ひと口分から半分程度に減らしたら、主菜も同じくらい減らせばいいのです」
糖質制限より、カロリー制限が重要なようだ。矢作先生はほかにも“とりすぎ注意”の栄養素があるという。
「脂質です。この50年で日本人の糖尿病の増加とともに動物性脂質の摂取量が増えています。脂質をとるなら、EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)が豊富な青魚が理想的。東アジア人はEPAとDHA摂取で糖尿病の発症率が下がることが示されています」