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「ただの便秘と思って放っておくのは危険です。大腸がんなどの病気や薬の副作用を見逃してしまうこともあるので、苦しいときには我慢しないで医療機関を受診することをお勧めします」

 

こうアドバイスするのは、横浜市立大学大学院医学研究科・肝胆膵消化器病学教室の中島淳主任教授。人知れず“お通じ”のことで悩みを抱える人は推定で1,000万人いるとみられている。これまで日本では、便秘は病気とはみなされず、医療機関に相談しても効果的な治療がなされないことが多々あった。自己診断で市販薬に頼って“下痢と便秘”を繰り返して症状を悪化させる人、あるいは、便秘の原因となる深刻な病気を見逃してしまう人までいるという。

 

そんな現状を変えようと、消化器内科・外科医らで組織する「慢性便秘の診断・治療研究会」が、昨年10月に日本初の『慢性便秘症診療ガイドライン』(南江堂)を作成した。

 

元来人間の体には、朝食後に、腸が動く大蠕動が起きて排便するという規則正しいリズムが備わっているが、忙しい現代人は、通勤でトイレを我慢したり出先で用を足せなかったりして「便秘になりやすい生活」が根付いている。

 

そこで、中島先生と今回のガイドラインの作成メンバーでもある、鳥居内科クリニック(東京都世田谷区)の鳥居明先生に、自分でできる「薬いらず」の便秘改善術を教えてもらった。

 

【食事】朝食をきちんと食べて、マグネシウムを多く取る

 

「朝ご飯を食べた後、1日に1度大蠕動運動が起きます。この“排便タイミング”を逃さないためにも、すぐに家を出ないで、トイレで用を足す時間を確保してください。便秘の苦痛にくらべたら、そのために早起きするのは、さほど難しいことではないでしょう」(中島先生)

 

そして海藻、玄米、納豆、ナッツ類など、マグネシウムを多く含む食べ物を取るとよい。この栄養素の摂取量が少ない人に便秘が多いという研究データがあるからだ。また新ガイドラインでは「過剰な食物繊維の摂取は便秘を憎悪させる」と明記されている。

 

「『食物繊維の摂取で便秘が治った』というエビデンス(科学的根拠)はありません。ただ便秘にならないようにと、食物繊維を取るというのはよいことだと思います」(中島先生)

 

睡眠中は消化が進む時間。就寝も早いほうがよい。

 

【運動】1日1回15分のウオーキングと腹筋を鍛える

 

加齢とともにだんだんと腹筋が弱くなり、とりわけ骨盤内筋肉が急激に衰える。これは排便に使う筋力でもある。

 

「キレイになりたいから無理なダイエットをして筋肉まで落としてしまう……。最近はこれで便秘がちになってしまう女性も多いのです。“便秘は美肌の敵”ですから逆効果ともいえるでしょう。しかもリバウンドをして体重が増えれば便秘が悪化する可能性も出てきます」(鳥居先生)

 

腹筋を鍛えるのがツライという人は、駅でエスカレーターを使わず階段を上り下りするだけでも十分効果がある。

 

「1日1回15〜20分程度のウオーキングをすると、腸が動いてお腹にたまったガスが出やすくなり、便を押し出す力も鍛えられますよ」(鳥居先生)

 

会社勤めなら1駅手前の駅で降りて歩く。主婦なら買い物に行くときに自転車を使わないなど、生活のなかで歩く習慣を身につけよう。

 

【セルフマッサージ】「の」の字にお腹を押してガスを出す

 

大腸は小腸とのつなぎ目から、右下、右上、左上、左下と“の”の字のような形を経て、直腸から肛門につながっている。この4つの角にガスがたまると腹痛が起きやすくなる。そんなときは「お腹の4カ所を順番に押していくマッサージが効きますよ」と話すのは、鳥居先生だ。

 

「まず、あお向けになって膝を立てる。これで腹筋がゆるみます。次に右下から、右上、左上、左下という順番で強めの力で押していくと、角にたまったガスが動きます。また腹式呼吸をしながらするとさらに有効。大きく息を吸って吐いたタイミング、お腹をへこましたときに押してください。ひと回り1セットで、10セットほどがよいでしょう」(鳥居先生)

 

人さし指から小指まで、4本の“指の腹”を使うのがポイント。

 

またこの「の」の字セルフマッサージは、風呂上がりなどリラックスした環境で行うとさらによい。自律神経のなかで副交感神経が優位になっており、胃腸の動きが活発になるのでおすすめだ。

 

自分でできる「薬いらず」の便秘改善術で、“快便生活”を取り戻そう!

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