厚生労働省によると、約3,000万人いる65歳以上の高齢者のうち、15%の462万人が認知症を患い、13%の約400万人が認知症の前段階とされる軽度認知障害(MCI)の状態だという(’12年度調査)。人生100年時代を迎えたが、日常生活を支障なく送ることができる“健康寿命”を延ばすためには、認知症を発症させない、発症しても進行させないことが求められる。

 

《認知症の前段階とされる軽度認知障害(MCI)の女性は、男性よりも認知症になりやすい――》

 

今年7月、東京大学の研究チームがアメリカの科学誌に発表した論文が反響を呼んでいる。

 

「MCIとは、正常な状態と認知症の中間にあり、物忘れが主な症状です。日常生活には支障がないのですが、たとえば銀行のATMで暗証番号を忘れてお金が引き出せないことがときどきあったり、同じ物を何個も買ってしまったりと、生活するうえで細かい失敗が出てくる状態を指します。認知症に進行しやすいので注意が必要ですが、現在の医療では、あまり有効な手段がないのが現状です」

 

そう解説するのは、研究チームの1人で、東京大学医学部附属病院・神経内科講師で医師の岩田淳先生。

 

研究では全国の38医療機関で診察を受けMCIと診断された男女234人(平均72歳)に1年に1度、認知機能テストや脳の画像検査を続けて3年間追跡調査を行った。その結果、3年以内に認知症へ移行した人は、男性が40%だったのに対し、女性は60%だった。

 

「認知機能の悪化が早い女性には、ほんのわずかな腎機能の低下がみられました。同じ方法で実施されたアメリカの研究では、認知機能の悪化に男女差はありませんでした。なぜ、日本人では男女差が生じたのか。その理由として、日本の女性は男性よりも体が小さいため血管が細く、生活習慣病などによって引き起こされる動脈硬化が起こりやすいためではないかと推測しました」(岩田医師)

 

脳内の血管がダメージを受けると、動脈硬化が起こり、神経細胞が壊され、認知機能の悪化を招きやすくなるという。

 

見過ごされがちだが、全身の血管のうち、健康を維持するためにとても大切なのは約9割を占める毛細血管。全身の隅々まで酸素や栄養、熱を送り、老廃物を流す役割があるからだ。

 

「毛細血管は放っておくと加齢とともに徐々に消滅してしまい、無機能化(ゴースト化)が進みます。血管が細い日本人女性が特に気をつけなければならないのが、この“血管のゴースト化”です」

 

こう語るのは、『血管の強化書-破れない! 詰まらない! 澄み切った血液は万病を治す』(ワニブックス)の著者で、金沢医科大学総合内科学准教授の赤澤純代先生。女性ホルモンの一種、エストロゲンには血管の保護作用があるため、エストロゲンが減少すると血管にダメージを受けやすくなる。40代以降は、特に注意が必要だという。

 

「加齢のほかにも、喫煙、運動不足、ストレスなどの習慣が血管に負荷を与えてしまいます。そして、血管の老化を加速度的に進行させてしまうのは、塩分や糖分をとりすぎる悪い食習慣です」(赤澤先生・以下同)

 

次の生活習慣を確認してみよう。当てはまる項目があれば血管のゴースト化が懸念される。丈夫な血管を保つためにも、すぐに改めよう。

 

【喫煙】

喫煙は血管を収縮させ、血液の粘度が高まりドロドロになる。さらに、動脈硬化が進みやすくなる。

 

【過度のアルコール摂取】

お酒を飲むと一時的に血圧が下がり脈拍を速めるが、長時間飲み続けると血圧が上がり高血圧症の原因に。

 

【塩分&糖質過多の食事】

血管力を高めるのは薄味の食事。外食や加工食品を減らし、野菜やタンパク質を意識的に取るようにしたい。

 

【肥満体形】

コレステロール値が高い状態が続くと動脈硬化が進み、血管が狭くなる。標準体重を維持しよう。

 

【運動不足】

少し息が上がるくらいのスピードで1日30分歩く習慣をつけたい。ハードな運動は関節を痛めることがあるので注意。

 

赤澤先生によれば、マッサージで血管の循環を促すことで、血管は鍛えることができるという。赤澤先生が推奨するのは次の2つのマッサージだ。

 

【血流を促す「ふくらはぎマッサージ」】

1)マッサージオイルを使い、ふくらはぎを両手で包み込むように、アキレス腱から膝裏のリンパ節までやさしくさすりあげる。
2)膝の裏は、少し力を入れて特に念入りにマッサージする。
3)親指でツボを押しながら、鼠径部までマッサージ。反対の脚も同様に。血海(膝の内側から指3本分上)、足三里(膝下の外側)、三陰交(くるぶしの内側から指3本分上)の、3つのツボを意識する。

 

【リンパの流れをアップさせる「首・鎖骨のプッシュ」】

1)あごの先から耳の下に向かって手でさすり、後頭部に向かって頭蓋骨のすぐ下を押す。さらに鎖骨に向かって首をさする。左右5回。
2)肩の骨の付け根あたりから、鎖骨の上側の骨に近い部分を指で押す。左右5回。

 

「必ず行ってほしいのがふくらはぎのマッサージです。ふくらはぎは“第二の心臓”といわれるほど、血流に大きな影響を与える大事な部分です。静脈には一方向に流れる弁があり、末梢の血液を戻す流れを作るには、ポンプの役割を果たす筋肉が必要です。ふくらはぎが硬くなっていたら微小循環が悪いことが考えられます。心臓に戻す方向でさすり、少し太い静脈に血液を戻しましょう」

 

さわってみて冷たく感じたり、硬かったり、むくんでいたりしたら血行が悪く冷えているサインだという。また、相手と楽しみながら行う「足指じゃんけん」も、末梢血管の血流を促進させる効果があるそうだ。

 

「首・鎖骨のプッシュ」はリンパの流れをよくするマッサージ。鎖骨の周辺には老廃物を運んでくる静脈がめぐり、リンパ管もたくさん張りめぐらされている。このあたりをほぐして血流をよくすることで、肩こりや頭痛も改善できて、一石二鳥だそう。

 

手軽にできることから始めて、血管のゴースト化を防ぎ、健康寿命を延ばしていこう!