花粉が大量飛散し、寒暖差も大きく、環境の変化も生じやすいこの季節は、なにかと体調を崩しやすい。
「不調があると気軽に市販薬に頼る人も多いですが、無意識のうちに誤った飲み方をしている人が少なくありません。きちんと注意を払わずに複数の薬をあわせて飲むと、薬の効き目を打ち消し合ってしまったり、また思わぬ副作用が生じることもあります」
そう警鐘を鳴らすのは、『ドラッグストアで買えるあなたに合った薬』(羊土社)の著書がある薬剤師の児島悠史さん。コロナ禍での“受診控え”もあり、市販薬の需要は増加傾向にある。薬局やドラッグストアの店頭には多くの市販薬が並んでいる。
「特に気をつけたいのは、働きが似ている薬剤を重複して服用すること。その顕著な例がかぜ薬です」(児島さん、以下同)
「総合感冒薬」として販売されているかぜ薬には、解熱鎮痛作用のある「ロキソプロフェン」や「イブプロフェン」などを含む商品がある。それを解熱鎮痛薬と併用すると、胃や腎臓に負担をかけてしまうという。
「『カフェイン』が重複すると、不眠につながるケースもあります。この時季は花粉症の薬を手放せないという方もいらっしゃいますが、花粉症の症状に効く成分では『抗ヒスタミン薬』の重複に注意が必要。花粉症のための薬と、かゆみを抑えるための薬の併用が、眠気のほか、めまいやふらつきなどの原因になる恐れがあります」
このほか、花粉症や寒暖差からくる体調不良の際に使われる市販薬に関して、気をつけるべき飲み合わせは複数ある。
コロナ禍での行動制限も緩和され、会社や仲間内での会食の機会も増えるなか、胃薬が欠かせないという人もいるだろう。医師に処方された降圧剤を飲んでいる場合、安易な併用は避けたい。
「胃薬に含まれる『炭酸ナトリウム』が、そもそも血圧に悪影響を与えることもあります」
便秘薬と抗アレルギー薬の飲み合わせでは、便秘薬の成分である「マグネシウム」が抗アレルギー薬の吸収を阻害することがあるので、こちらにも気をつけよう。
「すべての成分について把握するのも、実際には難しいところです。処方薬を飲んでいる人が市販薬を購入する際には、『お薬手帳』を持参して、薬剤師に相談すると安心でしょう」
不調を乗り切るための薬が、かえって体にダメージを与えてしまうことのないように、薬の効果だけでなく、副作用にも意識を向けることが大切だ。