便秘薬常用で認知症の発症リスク高まる可能性…英最新研究が発表
画像を見る 【グラフ】加齢にともない、便秘人口が急増

 

脳と腸内細菌叢の関係が深いことは、近年の研究からわかっている。脳腸相関という概念で、「腸は第二の脳」と呼ばれるほど、お互いが密接に影響を及ぼしあう。

 

「便秘という状態であること自体が、腸内環境が乱れていると捉えられます。健康な腸内環境であれば、そこから脳の状態に問題は生じません。しかし、腸内環境が悪化すると、迷走神経などを通じて腸内細菌が脳を刺激し、最終的に認知症発生のリスクにつながる。このことは、プロトンポンプ阻害剤という胃酸を抑える薬と認知症の関係を研究した結果からも明らかになっています」

 

下剤の使用で、腸内細菌叢が変化し、腸内の細菌が発する毒素が直接脳に影響を与えるという可能性もあるそう。また、腸の粘膜に穴が開くリーキーガット症候群を起こすことによって脳に影響がもたらされるという説もあるという。

 

「便秘になることや下剤を使うことで腸内細菌叢を健康な状態に保つのが難しくなります。それが認知症や血管障害などの形で、脳に悪影響を与える可能性が考えられるというわけです」

 

更年期以降、便秘になる女性は急増するうえ、高齢になるほど便秘は慢性化しやすい。その結果、便秘薬を長年使用することになるケースは少なくない。

 

「高齢者施設では7割以上の人が下剤を日常的に飲んでいるのではないでしょうか。安易に下剤に頼るのではなく、食事指導をするなど生活習慣を変えることで改善される部分もあります。便秘に悩む人はとにかく繊維質が足りていません。食物繊維を含む野菜、海藻類、こんにゃくなどをしっかりと食べることが大切なのです」

 

ただ、どれだけ食物繊維を取ってもそしゃくが足りなければ効果は半減してしまうのだそう。

 

「唾液の分泌が十分でなく、栄養がきちんと吸収されず腸内細菌に生かされないまま排せつされてしまうからです。栄養効果を損なわないためにも、しっかりとよくかむことがとても大切です。食物繊維の豊富な食事をしっかりと取るためにも、お菓子や甘いものの食べすぎは控えていただきたいですね。また、適度な運動が腸の蠕動運動を促すので、定期的な運動習慣も不可欠です」

 

下剤のほか、睡眠薬や抗うつ剤が認知症を招くという研究結果もすでに出ている。そのことからも、白澤先生は安易な薬の常用に警鐘を鳴らす。

 

「下剤に限らず、薬の長期服用はのちに認知症発症のリスクを高めることにつながりかねません。まずは食事の内容や食べる時間、運動をすることなど基本的な生活習慣を改善させることを怠らず、見直すところから始めていきましょう」

 

薬の副作用が健康寿命を脅かすことのないよう、“頼りすぎ”にはくれぐれも気をつけたい。

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