■同じ行動を繰り返す「常同性」がピック病の特徴
尾﨑医師がこれまで診察した患者さんの中にも、やはり、繰り返し万引をした方がいたそうだ。
「60代の男性の方で、奥さんが付き添って来られました。来院する以前に、すでに3~4年前から万引を繰り返し、警察沙汰にもなっていたと聞きました」
ピック病患者の場合、「犯罪行為」をしても「なにが悪いんだ?」と、その違法性が認識できないのが問題だ。
そして、尾﨑医師によれば、ピック病の顕著な特徴に同じ行動を繰り返す「常同性」がある。
「万引以外にも、特定の食べ物ばかりを食べる、同じものばかり買ってくるなど、とにかく行動を繰り返す特徴があります」
尾﨑医師が診察した別の男性(50代)は、同じ時間に同じ場所をひたすら散歩するという特徴があった。
「散歩するという行為が“アクセル”だとすれば、それに対してブレーキが利かないような感じです。たとえば大雨が降ったり、風が強かったりすればその行動をやめる理由ができるはずですが、その判断がつかない。」
「この患者さんは、毎日欠かさず、同じ時間に同じルートを歩いていて、顕著な特徴が見られました。一見、真面目な行動に見えますが、ブレーキが利かないというのが判断ポイントです」
尾﨑医師が診察してきたピック病患者は、介護施設などに入所するケースがほとんどだという。
医療費助成制度がある指定難病ではあるピック病だが、現状、有効な薬や治療法がないといわれると、なんとも希望を持ちにくいものだ。そこで、一日でも早く病気の兆候を発見するために、尾﨑医師が、ピック病チェックリストを危険度別で示してくれた。
「最も顕著な兆候は(1)万引です。そして、(2)同じ行動を繰り返す、(3)自身の行動に悪気がない、(4)同じものを食べる、などもピック病の典型的な症状なので注意が必要」
「(5)怒りっぽい・以前に比べて暴力的になった、(6)1つのことに集中できない・落ち着きがない、(7)あらゆることに関心がない、などは更年期の症状やほかの精神疾患と似通う特徴ですが、ピック病の可能性もあります」
「最近、怒りっぽくなったというのも、家族が感じることができるシグナルです。ご家族のなかで、チェックリストを試してみてください」
多くの項目は「年を取ったからね~」などと、加齢のせいにして片づけられかねないもの。
とにかく早期発見&医療機関への相談を!