■骨粗しょう症患者は60代女性の5人に1人
さらに女性は加齢とともに骨密度が下がっていく……。
「女性はホルモンバランスの関係で、特に閉経後は骨密度が下がっていきます。骨密度が下がると、それ自体で痛いので、活動レベルも下がってしまいます」
骨密度が減ることで骨がもろくなり、骨折しやすくなる病気が骨粗しょう症だ。
骨粗鬆症財団のデータによると、骨粗しょう症患者数は推計1280万人、うち女性は980万人。60代女性の5人に1人が患っているとされる。人口推計によると2023年の60代女性の人口が約750万人なので、約150万人が該当することになる。
「骨密度が低下することで、転倒によって骨折しやすい箇所は、膝、足首、股関節、背骨、肩、手首などと広範囲。日常生活の中での転倒には、特に気を付けるべきです」
寺尾先生は、私たちの身の回りで、転んだりしやすい危険箇所を挙げて解説してくれた。
「まず、滑りやすい浴室での転倒は多いです。あと階段での転倒。
年を取ってくると、ふつうに歩いているつもりでも、足が上がっていない場合が多く、『大丈夫』と思っているところでもつまずきます」
部屋の中でも、新聞紙や座布団、布団などが床や畳の上に置かれていれば、それにつまずいたり、足を滑らせることもある。
「玄関で上がるときも、急いで足を上げて爪先がぶつかってケガをするケースがあります」
一歩外に出れば、危険は増すばかりだ。
「マンホールの金属の蓋は、濡れていると滑ります。横断歩道の白い部分も滑ります。とくに雨上がりなど、濡れているときですね。
また、レンガ敷きの歩道なども危ない。歩くときは実際、足は1~2cm程度しか上がっていませんので、段差が1cm程度でも引っかかって転倒する場合があります」
では骨折、骨粗しょう症の予防法は?
「まず、日ごろから少しでも動くことです。大型スーパーなどは冷房が効いていて涼しく、買い物しているうちに歩けますし、バリアフリーの空間が多いというメリットもあります」
■少しでも歩く習慣を! 「その場足踏み」も効果大
年齢が上がるほど体のバランス力をキープすることが大事だそう。
「バランスを崩しやすい人は、足を擦って歩くようになっています。すると当然、何かにつまずいたり、転びやすくなる。
バランス力のアップには、家の中で『その場足踏み』が効果的です。どこかにつかまりながら、その場で足踏みをする。負荷が上がることで筋力も骨も強くなります」
骨に刺激を与えるという意味では「10回だけでも効果がある」と寺尾先生。
「1分間できれば、心肺機能もそれだけ高まります。大事なのは、続けることですので、毎日でも続けられる時間や回数でやりましょう」
食事の面では、カルシウム、ビタミンDを取ること。サプリメントでもいいという。
いま膝に不安がある人は、最寄りの整形外科などをたずね「かかりつけ医」を持つことも、心身の安心につながる。
思わぬケガから寝たきりにならないために、日ごろから運動と食事には気をつけよう。