■乳房のタイプによって、見落としの可能性が異なる
乳房のタイプによっても、見落としのリスクがことなる。特に乳がんが見落とされるリスクが高いのが、「日本人の約7割を占める“高濃度乳房(デンスブレスト)”だ」と前出の戸崎さんは警鐘を鳴らす。
高濃度乳房とは、乳房の中の乳腺が多く、マンモグラフィーを撮ったときに白く写るタイプの乳房のこと。がんなどの病変も白く写るため、白銀の中で白ウサギを探すように発見が困難なのだという。マンモグラフィーだけでは、精度が落ちることを示すデータもある。
「厚生労働省が立ち上げた乳がんに関するプロジェクトの調査結果によると、40代の女性7万人を対象にマンモグラフィーのみで検査した場合、がんが見つかったのは1000人中3人。一方で、マンモグラフィー+エコーで検査した場合、1000人中5人と、1.5倍に発見率が上がっています」(戸崎さん)
つまり、マンモグラフィーのみだと、5人中2人、4割のがんが見落とされている可能性がある。
ただ、乳がんの初期像の一つである石灰化はマンモグラフィーのほうが発見しやすいという利点も。
「高濃度乳房の方は、マンモグラフィーとエコーを併せて受けることが望ましいです」(戸崎さん)
だが、現在、国の乳がん検診の指針は、40代以上で2年に一度のマンモグラフィー検査のみ。エコーはオプションだ。自分が高濃度乳房かどうかは、検査後に問い合わせると教えてくれる。問い合わせてみて、該当する場合はオプションでエコー検査も受けよう。
■自らの胸の変化にも気を配って早期発見を
どこで検診を受けるかも、見落としを防ぐ重要なカギになる。NPO法人乳がん画像診断ネットワークの副理事長で、乳がんサバイバーの医療ジャーナリスト・増田美加さんは「クリニックで乳がん検診を受ける場合は、できるだけ乳腺外科専門医がいる医療機関で受けてほしい」と呼びかける。
「日本乳がん検診精度管理中央機構という組織では、マンモグラフィーの検査を行う技師や読影をする医師、マンモグラフィーの医療機器、医療施設の認定をして公表しています。
人間ドックや医療機関などの中には、認定を受けていない技師が検査を行ったり、医師が読影をしていることもあります」
資格がなくても違法ではないが、検査の精度を考えるなら、技師、医師、医療機器がそろって認定を受けているところで受けるのが望ましい。
こうした検診に加えて、日ごろからのセルフチェックも心がけたい。検診は100%ではないため、自分で発見する意識を持っておくことが大事だ。
「入浴の際に、石けんをつけた手で乳房をさわって、しこりがないか乳房を確認してみる。
胸の大きさが変わっていないか、ひきつれや皮膚の赤みがないか、乳腺から血が混じった分泌物が出ていないかなど、定期的に確認しておきましょう」(前出の川端さん)
万が一、乳がんが見つかった場合は、治療を受ける病院選びが重要になる。
「ひとつの目安として、手術の症例数が多い病院を選ぶという方法があります。また、乳がんは手術だけでなく、化学療法や放射線治療を組み合わせることも多いので、腫瘍内科医や放射線科医ほか、専門医が揃ってチーム医療を行っている病院だとベスト」(増田さん)
検診の受け方や体の変化に注意して早期発見を心がけよう。