「夫がある日突然、事故や病気で亡くなったらどうしよう」と、不安に思う妻は多い。夫の死後、喪主として葬儀を仕切り、身の回りの物を処分したり、手続きをしたりと、やることがたくさんある。その間、食べていかなければならないので、悲しんでばかりもいられないのが本音だろう。
「何から手をつけていいのかわからない、という声をよく聞きます。お葬式でかかった費用の清算、扶養されていれば年金の手続き、健康保険の名義変更、預貯金、民間の保険の解約の手続きなどをしますが、国や勤め先などから、もらえるお金があるのを知らないで、余計なお金を使うケースを見かけます。手続きがスムーズにできるように事前に知っておきましょう」
そうアドバイスするのは、ファイナンシャルプランナーの畠中雅子さん。
まず夫が会社員であれば、葬儀代にプラスできるお金「埋葬料」が健康保険組合、協会けんぽからもらえる。金額は会社によって異なるが5万円程度で、健康保険組合に加入している人であれば、もう少し多めという。
そして大事なのは、夫が死んでから月々の収入がどのくらい少なくなるのか把握すること。
「夫が会社員か自営業か、高校を卒業するまでの子どもがいるのかどうか、条件によって遺族年金の種類や受取額が異なります。不足分を補うための保険の加入のプランや妻の働き方が違ってきますので、まずは、遺族年金を計算してみましょう」(畠中さん・以下同)
たとえば会社に勤めていた夫(50)が死んだ場合、妻(48)はどれだけもらえるのか計算してみよう(2018年4月から満額で受け取る場合)。
子どもが小学生2人のケースでみると、妻には遺族基礎年金と遺族厚生年金がもらえる。その際、大きなポイントになるのが子どもの年齢だ。
「夫が会社員の場合、お子さんが高校を卒業する18歳の3月末まで遺族基礎年金と遺族厚生年金がダブルでもらえます。たとえば、平均標準報酬月額が40万円の人のケースですと、妻が受け取れる遺族厚生年金の目安は年間約64万1,300円になります。そこに遺族基礎年金77万9,300円がプラスされ、さらに、子の加算分、1子あたり22万4,300円がもらえます」
第3子以降は7万4,800円が上乗せされる。子どもが2人いる男性のケースでは、トータルで年186万9,200円もらえる計算になった。
子の加算分と遺族基礎年金が受け取れるのは、子どもが高校を卒業する18歳の3月末まで。その後、妻は遺族厚生年金にプラスして年58万4,500円(’18年度)の中高齢寡婦加算が受け取れる。
中高齢寡婦加算は夫の死亡時に妻が40歳以上、40歳のときに遺族基礎年金の支給対象となる子どもがいる、夫の厚生年金の加入期間が20年以上あるといった要件を満たすと受け取れる。
子どもがいない妻の場合、遺族基礎年金はもらえないが、遺族厚生年金と中高齢寡婦加算が受け取れる。
夫が会社員の妻がもらえるお金はまだある。会社勤めの人は、定年まで働くと退職金がもらえるが、定年前に亡くなると、死亡退職金や弔慰金がもらえるのが一般的。勤務してきた功労に対して支払われるもので、勤続年数や給与の額で変動するが、退職金が目安になる。’17年9月に、日本経済団体連合会(経団連)が発表した「’16年9月度退職金・年金に関する実態調査結果」によると、退職金の平均は、総合職の52歳(勤続年数30年)大学卒で、1,710万2,000円となっている。夫の勤めている会社の規約などで確認しておこう。
さらに、仕事中の事故や業務上の傷病によって亡くなった場合は、遺族補償給付がもらえることがあるので、該当するかどうかは、労働基準監督署で確認できる。
民間の生命保険に加入していたら、死亡保険金や入院給付金をもらう手続きをしよう。
「審査が通るまで時間がかかり、すぐに支払われないこともあります。そこで、死亡保険金や入院給付金の一部を先払いしているサービスがあるかどうか、保険会社に事前に確認しておくと、何かと支払いがかさむときに助かります」
死亡診断書があれば、死亡保険金の何割かを取り急ぎ支払ってくれるというもの。保険会社によって条件が異なるという。