新型コロナウイルスの蔓延で、さまざまな消毒液が身近な存在になった。だが、ひとつ使い方を間違えると、重大な事故を引き起こす恐れがあるという。専門家が警告するーー。
「コロナ禍で身の回りを清潔にしようという意識が高まり、エアコンの内部を自分で洗浄しようとする方が増えているかと思います。しかし、方法を誤ると、火災など危険な事故につながる恐れがあるので、注意が必要です」
こう話すのは、経済産業省所管・製品評価技術基盤機構(NITE=以下同)製品安全センターの佐藤秀幸さんだ。
NITEに通知されたエアコン事故は、’15〜’19年度の5年間で計263件発生しているが、うち火災が244件、死亡事故が6件(7人)。
「なかでも、誤った洗浄方法による火災事故が、最近5年間で20件も発生しているんです」(佐藤さん)
そこで、コロナウイルス対策「消毒液」でやってはいけない使用法を専門家に聞いた。
【NG1】効果もない空間噴霧で健康被害
名前が似ている「次亜塩素酸水」と「次亜塩素酸ナトリウム」。混同している人も多いようだが……。
「この2つはまったく別ものです。市販の消毒用アルコール(エタノール)がコロナ感染防止対策で品薄となり、家庭での代用品として注目されたのが『次亜塩素酸水』です。『次亜塩素酸水』と、『次亜塩素酸ナトリウム』を混同して、誤って使用してしまうと、大変危険な事故につながる可能性があります」(佐藤さん)
次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウム溶液を混同したとみられるトラブルは実際に報告されている。
《昨日、温泉施設で次亜塩素酸の噴霧をしており、自分も他の人も気分が悪くなり、倒れて骨折した人もいた。指導して欲しい》
これは今年6月に、消費者庁に報告された事故情報だ。消費者庁消費者安全課の落合英紀さんはこう語る。
「次亜塩素酸水と誤って、次亜塩素酸ナトリウムを噴霧してしまったとみられる事例が複数報告されています」
NITE広報室の吉田耕太郎さんはこう警告する。
「韓国では過去に、殺菌剤が入れられた加湿器により死亡した『加湿器殺菌剤事件』も起きているほど。加湿器に消毒・殺菌効果があるものを入れるのは危険な場合があるんです。また、次亜塩素酸水を加湿器に入れて使用する場合の安全性については十分な情報が得られていないと聞いています」
そもそも「空間噴霧にあまり効果は期待できない。ウイルスを除去するような噴霧をしようとすれば、人にも有害になる」(落合さん)という。
【NG2】料理しながらアルコール掃除はダメ
品薄や高値の状態が解消されつつあるアルコール(エタノール)。こちらにも落とし穴があるという。
「新型コロナ感染防止対策のためにアルコールを使う場合は、『医薬品・医薬部外品』『アルコール60%以上』という濃度表記があるものを選びましょう。しかし、同時に“火気厳禁”。キッチンで、コンロの火がついたまま、まな板などにアルコールのスプレーを噴霧したりすると、引火する恐れがあります。さらに衣類などに燃え移る危険もあるので、キッチンなど、火の気のある場所では絶対に使用しないでください」(落合さん)
これらの“やってはいけない使用法”を頭に入れたうえで、新型コロナ感染防止を心がけよう。
「女性自身」2020年7月28日・8月4日合併号 掲載