人生100年と言われる時代。定年を過ぎた後も長い時間を快適に過ごすためには、“定年前”の心構えがとっても大切。過度な楽観は禁物ですが、決して悲観しすぎることもありませんーー。
夫が定年を迎えたら、そのときに入る退職金で海外旅行をしたい、ブランドもののバッグを買いたいなどと、使い道をあれこれ考えたことはないだろうか?
「多くの人が、『退職金は長年働いた自分へのごほうび』と勘違いしていますが、あくまでも『給料の後払い』です。数千万円という単位で振り込まれた通帳を見ると、豪華な旅行に出かけてしまったり、投資をしてしまったりして、病気や介護が必要なときにお金がない、という話をよく聞きます。定年後にまつわる“勘違い”をなくして、“定年前”の今から夫婦で準備をすれば、安心した生活を送ることができますよ」
そう語るのは経済コラムニストで、著書に『定年前、しなくていい5つのこと「定年の常識」にダマされるな!』(光文社)がある大江英樹さん。大江さんは、自身が大手証券会社に定年まで勤務した経験をもとに、資産運用やライフプランニングに関する講演や執筆活動を行っている。
大江さんによれば、“定年前”の準備は定年のタイミングの5年前には着手しておくことが、快適な老後につながるという。
そこで、定年前の「お金」の準備について大江さんが解説してくれた。
■やるべきこと
【「加給年金」「振替加算」など受け取れる年金を忘れず確認】
「ねんきん定期便」に載っていない「加給年金」を忘れないように。
「加給年金は、夫が20年以上、厚生年金や共済年金保険料を納めていることが受け取るための条件。65歳に到達したとき、妻が65歳未満であれば22万4,900円もらうことができます。妻が65歳になったら『振替加算』として、妻の年金にプラスされます」
【保険について細かく点検しておく】
夫の死後、家族が生活に困らないように生命保険に加入している人もいるが、子どもが独立していれば不要な場合も。
「一定の貯蓄があれば、生命保険や医療保険は必要ありません。ただし、すべての保険が不要というわけではなく、自動車保険、火災保険や地震保険など、“蓄えや公的保障ではまかなうことのできないリスク”に対する備えはしておきましょう」
【住宅ローンは、定年後も働くことを考慮して返済する】
退職時に住宅ローンが残っていると、退職金で一括返済したくなる。
「1,000万円以上の残債を退職金で返済してしまうと、『一時出費』のためのお金が足りなくなることがあります。今は低金利なので、金利の低いローンに借り換える方法もあります。どちらがお得かシミュレーションしてみましょう」