■60歳からでもiDeCoで“私的年金”を確保しよう
自分で備える「私的年金」として人気の個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)は、これまでは60歳未満の人しか加入できなかったのが、今回の大改正で加入年齢が65歳未満に引き上げられた。
「受取り開始年齢の上限も、70歳から75歳に引き上げられますので、老後資金が少ないという人には年金を増やす絶好のチャンスだといえます。また、50代半ばから始めても運用期間が長く取れるようになるので、『今さら』と思っていた人も、今回の改正を機に検討してみてはいかがでしょう」
たとえば、毎月2万円をメガバンクの定期預金で10年間積み立てた場合と比較してみよう。
10年後、定期預金では240万184円で、利息は146円(税引き後)にしかならないが、iDeCoで運用したケース(想定利回り年3%)では279.5万円にもなる。利益は39.5万円(税引き後)で、その差は歴然!
「長生きリスクに備えるためにも、長く働きながら長期投資でリスクを抑えてお金を増やすチャンスを活用しましょう。しかも、iDeCoの掛金は全額、所得税の控除の対象になるので、確定申告をすると税金が還付されます」
ちなみに年収300万円、40歳以上の人が、iDeCoに毎月1万円を積み立てていたら、掛金全額が所得控除になるので1年間での税制メリットは1万8,100円。所得税は6,100円、住民税は1万2,000円と、大きな節税効果が期待できる。こうした税制メリットを考えても、iDeCoの加入年齢の引き上げは、老後資金確保のための大きなチャンスだといえるだろう。
それではここで、一度iDeCoの基本についておさらいしておこう。
iDeCoは自分で決めた掛金を毎月積み立てるもので、口座は1人1口座のみ。銀行や証券会社を選ぶ際は、運用商品の種類や手数料を比較検討しよう。
掛金の限度額は、自分の勤務先に企業年金があるかないかなどによって月額1万2,000円〜2万3,000円と異なってくる。
「公的年金の被保険者の種別や、企業年金の加入形態によって、積み立てられる掛金の限度額は決まっていて、限度額の範囲内であれば、月5,000円から千円単位で積立額を自由に設定できます。また、積み立てたお金は、自分で選んだ投資信託、保険、定期預金などの金融商品で運用できます」
積立運用した資金は、原則として60歳以降に一括、または分割(年金形式)で受け取ることになる。強制的に資産が形成されるのがiDeCoの強みだが、途中で引き出しができないので、少ない金額からスタートするのがおすすめだという。もちろん掛金や、運用商品の組み合わせは後から変更することもできる。
ただし、そもそも働いていない人や、収入が少なく所得税の額も低い人には節税メリットが少ないので、諸経費としてかかる加入時の手数料2,829円や、毎月数百円の手数料を上回るように「運用」しなければうまみがない。
また、投資はあくまでも余裕のある範囲で行うのが鉄則。預貯金などが月収の6カ月〜1年分確保できていない人は、まず資金を蓄えることからスタートしよう。
すでに40年(480月)分の国民年金保険料を納付済みの人は、60歳以降、iDeCoに加入することができない。ただし、年金の未加入期間があり、いわゆる「任意加入」をしている人はiDeCoに加入できるので、早めに自分の納付状況をきちんと確認しておこう。