部屋を貸す側と借りる側とでは経験値に差があり、借りる側が不利になりがち(写真:アフロ) 画像を見る

年度替わりを控えるこの時期は、新生活を前に引っ越しの需要がもっとも高まるシーズンだ。読者世代でも、子育てが一段落し、住まいをダウンサイジングする、実家に住む親が通院などに便利な生活環境のために駅近のマンションに引っ越す、などのシーンに直面することがある。そのときまず頭に浮かぶのが「いい部屋を見つけたい」と同時に「なるべく費用を抑えたい」という考えだろう。

 

「物件を借りるにあたって、特に困る人が多いのが入居時の初期費用についてです。借りる側が気づかないところで、不明瞭な費用が上乗せされていることがあります」

 

そう話すのは、不動産テック企業TERASS代表取締役社長の江口亮介さんだ。

 

「部屋を貸す側と借りる側とでは経験値に差があり、借りる側はどうしても不利になりがち。借りる側には、知らないところで余分に費用を支払っていないかを見極める姿勢が求められます」

 

新しい物件への入居時、またそれまで住んでいた部屋の退去時に支払う費用を抑えるために、おさえておきたいポイントがあると江口さんは話す。

 

「物件紹介サイトで気になる部屋が見つかったら、まずは必ず2社以上の業者から初期費用の見積もりを取ってください。見積もりをすぐに出してくれなかったり、一度その業者の店舗に行かないと物件を案内してくれないようであれば、別の業者をあたりましょう」

 

見積もりを出すことをしぶる、物件見学に際して現地集合に応じてもらえない、などの時点で、その先もなにかと業者の都合のよい方向へ話を進められてしまうことが懸念されるという。

 

見積もりを取り、実際の額を確認すると、家賃の4~5倍が目安と言われるなど、大きな負担に感じるもの。家賃が少し下がらないか、と交渉してみたくもなるが──。

 

「貸す側にとって、賃料は物件価格や賃貸収入の利回りに関わってくるため、極力手を付けたくないところ。交渉するのであれば、礼金の額を下げてもらうこと、もしくは一定期間の賃料を無料にしてもらうフリーレントをつけてもらうことが現実的でしょう」

 

このほかに、見積もりに記載されているなかで注意したい項目が「火災保険料」「消臭・抗菌代」「仲介手数料」など。仲介手数料については、契約を仲介した不動産業者が受け取れる金額について、貸し主・借り主双方から家賃の0.5カ月分ずつ、というガイドラインがある。見積書に1カ月とある場合、業者によっては下げられる可能性も。

 

江口さんによれば、最初に目にした見積もりから、最終的に契約する段階とでは、初期費用に5万~10万円の差があるケースも存在するというから、気になる項目はきちんと確認するようにしたい。

 

転居先が決まり、いざ今住んでいる物件を出るときの費用についても注意点が。借りていた部屋の“原状回復”に関するトラブルは後を絶たない。

 

「クロスや床など、“経年劣化”の修繕は貸し主の負担です。借り主が費用を払う必要はありません。これは国土交通省のガイドラインにもきちんと明記されています。また、過失によってできてしまった破損については、火災保険が適用されるケースも。退去のタイミングまでに余裕をもって直しておくようにしましょう」

 

また、退去時は業者立ち会いのもと、物件の状態を確認する、というやり方をするケースも多いが、じつはそれは義務ではない。

 

「立ち会うと、傷などについて、何かと責任を借り主側に押し付けられてしまいがち。退去前に空にした部屋の状態を写真に残しておき、鍵は期日までに郵送で返却すればOKです」

 

次に引っ越しを検討するときは、コストカットできる項目がないかきちんと点検しよう。

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