■収集日や分別がわからず、ゴミがたまるのが日常に
ところで住居がゴミ屋敷になってしまうのは、どんなタイプの人に多いのだろうか? 前出の田中さんに解説してもらった。
「まず、身体的な面では、けがや病気などで動くことがままならず、家にこもりがちになってしまっている状態のときによく起きます。これは高齢者の方に多いですね。しかし、ゴミ屋敷の清掃依頼は、じつはふつうに仕事をしている若年層の方々からも多いんです」
最初は、「ゴミ箱からあふれる1つのゴミ」から始まるそうだ。
「ゴミがゴミ箱に入っていない状態が常態化すると、いずれ手に負えなくなります。床が埋め尽くされたらもうゴミ屋敷です」
依頼人は人口が集中している都市部で、しかも集合住宅のワンルームに住んでいる人が多いという。また、単身生活の人の比率も高い。
「マンションのゴミ分別が厳しいところや、どこまで分別したらいいかわからないほど細かく分かれている地域などは特に注意です。ゴミを出す心理的ハードルが上がり、『もう無理』とあきらめてしまい、どんどんゴミがたまる事態を招きがちです」
福祉系をはじめ、“人のために力を注いでいる職業”の人も、じつはゴミ屋敷に陥りやすいそうだ。
「夜勤など不規則なシフトがある方も多いです。生活リズムが乱れて、帰宅時に買ってきたお弁当を、疲れて食べずに寝てしまうような方ですね」
では、家族がゴミ屋敷を生まないためには、何を心がけたらいいのだろうか?
「まず、単身の家族がいる場合は、こまめに顔を見に行くことです。ゴールデンウイークなどを利用し、実家に一人で暮らす高齢の親御さんの元を訪れて話をしましょう。特にストレスの蓄積が危険因子となるので、家族でコミュニケーションを取ることが大切です」
ゴミ屋敷になるかどうかの境界線は、「ゴミの収集日に出せるか、出せないか」にあると田中さん。
「収集日に出せないことが2度、3度と続けば、ゴミ袋がたまっているのが日常になってしまいます。それを防ぐため、スマホのリマインダー機能で収集日にアラームが鳴るよう設定してあげてください」
また、心のケアも大事となる。
「パートナーや身近な方、ペットを亡くすことがきっかけになるケースも。友人や身内が周りにいない場合は、連絡できる人の存在をご家族が確認しておきたいですね」
知らないうちに手がつけられない状態に陥っていた、ということのないよう、まずは離れて住む家族との対話から始めよう。