(写真・神奈川新聞社)
神奈川大学が東日本大震災の被災地で「KU東北ボランティア駅伝」と題した取り組みを続けている。震災翌月から始まった活動も5年目。当初はがれきの撤去や救援物資の仕分けが中心だったが、今は子どもたちのサポートへと内容も変わってきている。岩手県陸前高田市に向けて3月10日に出発するバスは、活動開始から200便目。同大学は今後も支援のたすきをつなぎ続けたいとしている。
同大学は1997年から箱根駅伝を連覇した実績もあり、先輩から後輩へと支援をつなぐ意味を込めて「駅伝」と銘打った。通称「ボラ駅」は震災当時の学長の強い意向がきっかけ。被災地支援と同時に、学生の学びの場となり、人間として成長してもらいたいとの思いだったという。
当初は、岩手県遠野市の市長が同大学OBだった縁で同市を拠点に。2011年4月、大学が第1便のバスを用意し、有志の学生、教職員らを送り込んだ。以来、現地のOBや行政などの協力の下、週末や長期休暇を使った活動が続く。大学が交通費や宿泊費を負担するなど、学生が参加しやすい環境を整えている。
同市では救援物資の仕分けや津波で流された公文書の修復、全国から寄せられた本を図書館に寄贈するための献本などに従事。13年度からは陸前高田市に拠点を移し、ワカメやカキ収穫の手伝い、がれきの中から遺留品を捜す作業を手掛けたほか、「奇跡の一本松」で知られる松林の再生プロジェクトにも携わった。
ソフト面では小学校の校庭に仮設住宅が建つなど今も十分な遊び場がない中、地元NPO法人と連携、放課後、子どもたちと一緒に遊ぶ活動も行う。中には親を失い、深い心の傷を負った子どももいるという。
現在ボラ駅は隔週ペースで、これまでの参加者数は延べ約1万6千人を超えた。今は教職員の付き添いはなく、便ごとに決めたリーダーを中心に、学生たちが主体的に活動している。榎本誠副学長は「参加した学生は、帰ってくると表情が変わる。大学の中では得られない貴重な経験をしている」と手応えをつかむ。
リピーターが多いのも特徴だ。経営学部3年生の奥田萌さん(21)は7回参加。ボランティア論の授業の実践の場にと考えていたが、今は知り合った子どもたちに会いたい一心で足を運んでいる。「(被災地と)つながっていると実感する。一方的な支援ではなく、こちらが学ぶことの方が多い」
既に10回参加した工学部3年生の泉谷篤史さん(21)は自らの経験を同世代で共有したいと、学内で座談会を開いたり、被災地支援に取り組む他大学とイベントを共催したりと、精力的に活動する。「支援活動に終わりはない。震災を風化させないためにできることをやっていきたい」
就職活動が本格化する2人は、200便目となる3月10~14日の行程には参加しない。後輩たちが被災地で何かを感じ取り、“支援のたすき”をつないでくれたら、と考えている。
【関連記事】