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(写真・神奈川新聞社)

貧困状態にある子どもたちを救済するため、藤沢市の私立幼稚園が独自の育英資金制度を新設した。返済不要の給付金制度で、家庭の経済事情で苦しむ在園児と卒園生が支援対象。在園児には途中退園を防ぐため保育料相当額を、卒園児には受験料と入学金相当額を支給し、高校・大学への進学を後押しする。県によると、県内の幼稚園で同種の取り組みは聞いたことがないという。

制度を創設したのは同市石川の善行森の幼稚園。ことしの年始め、在園児から園に届いた年賀はがきの1通が1等に当選したことがきっかけだった。副賞の現金10万円の使い道を検討する中で育英資金を創設する構想が浮上。5月下旬の理事会で了承を得てスタートさせた。

中心となって創設を進めた古郡民雄理事長(83)は「今の子どもたちは救われる制度が少ない」と創設の理由を説明する。戦後の混乱期に高校を卒業した古郡さんは、家庭の経済事情で大学進学を諦めて旧郵政省に就職した経歴を持つ。

当時は戦死者で抜けた人材の育成に国が力を入れていたといい、「省の制度で学ばせてもらった。食・住の心配のない全寮制でね」と古郡理事長。恩返しの気持ちから、園を支えてくれる地域の子どもたちに還元する仕組みを考案した。

同園では、経済的理由で退園を余儀なくされる園児が毎年数人いる。育英資金はこうした在園児の救済に活用。幼稚園の保育料と市から保護者に支給される就園奨励費補助金の差額分を支給し、実質負担ゼロで通い続けられるようにする。

また、実力があるのに経済的な理由で高校や大学への進学を諦めざるを得ない卒園者にも手を差し伸べる。在籍した最終学校長の推薦など一定の条件をクリアすれば、受験料と入学金相当額を全額援助する。

原資とする年賀はがきの10万円だけでは不足するため、同園は毎月5万円程度を投入して運営する予定。バザーの収益や太陽光発電の売電収入の一部を繰り入れることも検討していく。

古郡理事長は「公的な奨学金制度は主に入学後の授業料負担を賄うもの。進学にもお金がかかり、セットで使うことで大きな成果が上がるのではないか。子どもたちが夢と希望を持って成長できるよう支援していきたい」と語った。