(写真・神奈川新聞社)
蒸し暑い夏に鮮やかなピンク色で清涼感をもたらすハスの花。名所として知られる「東の池」(大磯町生沢)の水面から、今年は葉が1枚も残らず姿を消している。近隣住人も「きれいで人を集めた花。復活できるならしてほしい」と心配そうに水面を見つめる。
東の池は江戸初期に農業用水のため池としてつくられ、現在も利用されている。水利権などを管理する生沢東生産組合によると、昨年は葉も花も若干あったものの、今年は全くなくなった。
これまでも花が咲かない年はあったというが、しゅんせつや除去作業もなく葉まで姿を消すのは異例という。同組合は「ここ数年続いた開花の状況からすると異常」と首をかしげる。
池に流入するのは山からの水と雨水のみで、生活雑排水は流入しない。池からの水を利用する水田や下流に当たる不動川で、稲が育たないなどの声や生態系の変化はなく「水質には問題ないと判断している」(同組合)という。
同組合が県農業技術センター(平塚市上吉沢)や県立フラワーセンター大船植物園(鎌倉市岡本)などに問い合わせたところ、一般的な原因として(1)根を張る時期の水温の低さや沼底に日光が届かない(2)アメリカザリガニやカメによる食害-などが分かったが、特定はできていない。今年は国内最大級のハスの群生地として知られる琵琶湖岸の烏丸半島周辺(滋賀県)でもハスの葉がほとんど見られない状態で、こちらも原因不明という。
ハス自体は自然発生的に育ってきた“副産物”で、町も同組合も積極的にハスの保全活動をしてきたわけではないが、町は「観光資源になり得る一つだった。復活はしてほしいけれど、自然に任せるしかない」と肩を落とす。小田原市から撮影に訪れた男性会社員(54)は「毎年この時期に涼しげに咲いていたので来てみたが、この風景はあまりにも寂しい。できれば元に戻ってほしい」と祈るような面持ちで見つめていた。