(写真・神奈川新聞社)
相模原市緑区の障害者施設「津久井やまゆり園」で起きた殺傷事件で、元施設職員の容疑者(26)=鑑定留置中=が、死傷した入所者計43人について「全員殺すつもりでやった」と供述していることが19日、津久井署捜査本部への取材で分かった。捜査本部は同日、重軽傷を負った入所者24人に対する殺人未遂の疑いで、同容疑者を追送検した。
追送検容疑は、7月26日午前2時半ごろ、施設内で23~57歳の男女24人を刃物で切り付けたり突き刺したりするなどして殺害しようとした、としている。
同容疑者はこれまで、同施設の入所者19人に対する殺人容疑などで3回逮捕されている。今回は重軽傷を負った27人のうち、職員3人を除く入所者24人について立件した。この3人を含む結束バンドで縛るなどした職員5人についても今後、追送検する方針。
捜査本部によると、24人は首や胸などに全治1週間~6カ月のけがをし、現在入院している人はいない。捜査本部は同容疑者の供述に加え、狙われた部位が首などだったことから殺意があったと判断。殺人未遂容疑を適用した。
同容疑者は現在、刑事責任能力を調べるため来年1月23日までの日程で鑑定留置中。横浜地検は責任能力を調べた上で、これまでの殺人容疑などとともに起訴の可否を判断する。
捜査関係者によると、同容疑者はこれまで、「何人殺害したか分からない」と供述。「自分は救世主」「自分がそうすることが社会のためになる」などと殺害を正当化する考えを繰り返しており、被害者への謝罪は口にしていないという。
■県警 2人の実名公表
県警は19日、容疑者(26)の追送検容疑となった、負傷した入所者24人のうち2人について、「家族の了解が得られた」として実名を公表した。残る22人を匿名とした理由は「家族の強い意向」などとした。県警は事件発生以降、プライバシー保護や家族の意向を理由に被害者名を発表しておらず、報道各社が実名発表を求めていた。
県警は事件が発生した7月26日、死亡した19人は性別と年齢、負傷者は性別と年齢幅だけを発表。8月3日には実名を発表しない理由として「知的障害者の支援施設であり、遺族のプライバシー保護の必要性が極めて高いと判断した。遺族からも強い要望があった」とのコメントを出した。
報道各社で構成する県警記者クラブは同8日、「発表は実名が原則で、報道機関の責任で実名か匿名か判断する」との立場を再認識し、前例としないよう申し入れ。県警は「報道各社の原則について理解している。今後の広報で、今回匿名で発表したという事実にならうことはない」と回答していた。