(写真・神奈川新聞社)
日本音楽著作権協会(JASRAC)が、ピアノやギターなどを教える音楽教室から楽器演奏に伴う著作権の使用料を徴収する方針を示したことが波紋を広げている。教室を運営する企業や団体は「音楽教育を守る会」を立ち上げ、「演奏権は教室での演奏には及ばない」として反発を強めている。
著作権法では、「公衆」に聞かせることを目的に曲を演奏したりする「演奏権」を、作曲者や作詞者が占有すると定めている。
国内外の楽曲約350万曲の著作権を管理するJASRACは2月2日、音楽教室で先生が演奏する際、生徒が不特定の「公衆」に当たるとして著作権上の演奏権が及ぶとの見解を表明。7月に文化庁に使用料規定を提出し、来年1月から徴収を始めたい意向を示した。
JASRACの浅石道夫理事長(65)は「非営利・入場無料・無報酬の場合は徴収しないが、音楽教室は生徒から受講料を取っている営利行為である。また、メーカーにとって音楽教室は楽器を売るためのビジネスモデルになっている」と、徴収対象とする理由を説明している。
JASRACによると、音楽教室は全国で約1万1千カ所あり、うちウェブなどで生徒を募っている教室は約9千カ所に上る。現状では年間受講料の2.5%を著作権料に充てると提案しており、徴収額の推計は年間10億円を超えるとしている。
こうした動きに対し、教室を運営するヤマハ音楽振興会、河合楽器製作所など業界大手と、ピアノ教師らでつくる全日本ピアノ指導者協会など7企業・団体は「音楽教育を守る会」を結成。徴収方針が示された日に開いた初会合では、「演奏権が及ぶのは『公衆』に聞かせるための演奏であり、音楽教室での練習や指導のための演奏は該当しない」「文化の発展に寄与するという著作権法の目的にも合致しない」と反対の声を強めている。
守る会は3月末までにJASRACに規定の取り消しを求める予定という。同会は、両者の主張が平行線をたどる場合は「司法に判断を委ねたい」と話しており、訴訟に発展する可能性もある。