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(写真・神奈川新聞社)

 

県は17日、神奈川芸術文化財団に無償貸付していた版画家・棟方志功の版画を紛失したと発表した。原画はカラーコピーのレプリカにすり替わっており、2014年に県立近代美術館鎌倉別館で展示された際に観覧者からの指摘で判明した。すり替わり発覚から今月まで約3年間、原画を捜していたという。同財団は「対応が遅れ、おわび申し上げます」と陳謝した。

 

県文化課によると、紛失したのは棟方の最晩年の作品で「宇宙讃(神奈雅和(かながわ)の柵)」(縦50センチ×横65センチ)。1974年、県民ホール開館にあわせ、県が鎌倉市に住んでいた棟方から直接、300万円(当時)で取得した。原画を基に京都で緞帳(どんちょう)を制作。緞帳は現在、同ホールのエントランスに展示されている。

 

開館以降、原画は同ホールの館長室に飾られていたが、14年5月に近美鎌倉別館の「新収蔵作品展」で展示した際、専門的知識を持つ観覧者に「レプリカではないか」と指摘を受けた。

 

調査の結果、額は館長室に飾られていたものと同じだったが中身はカラーコピーにすり替えられていた。コピーは精緻なものではなかったという。

 

県によると、購入時に和紙だった原画を確認しているが、それ以降にいつカラーコピーにすり替わったかは不明だという。

 

同ホールの学芸員らが館内を中心に原画を捜索、歴代館長ら関係者からもヒアリングしたが発見に至らなかった。同ホールの副館長は「レプリカが何かの案件で制作されていた可能性もあり、館内に本物があるかもしれないと思い捜してきた」と説明した。同財団は、4月に専務理事が着任したのを機に初めて警察に紛失について相談した。今後、窃盗容疑で被害届を出す予定という。

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