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(写真・神奈川新聞社)

 

戦後の横浜に生きた街娼(がいしょう)の生きざまを描く演劇「横浜ローザ」(杉山義法作、大西一郎演出)が26~30日、横浜市中区の横浜赤レンガ倉庫1号館で上演される。横浜ゆかりの俳優、五大路子さんがライフワークとして演じてきた。舞台だけでなく若者との対話も重ね、戦争が多くの人生を狂わせた実態を伝えている。

 

毎年、終戦記念日の前後に上演するのが恒例だったが、今年は29日の横浜大空襲の日に合わせた。

 

ローザのモデルは、伊勢佐木町や馬車道に立ち続けた白塗りの娼婦(しょうふ)、メリーさん。1921年に生まれ、終戦間もない横浜で米軍将校らを相手に体を売り始めた。劇中の「青春をちょん切られた」「(戦争に)勝っても負けても、女はいつでもどこでも一緒」などの言葉が、戦争に翻弄(ほんろう)された女性の無念を代弁する。

 

五大さんは91年にメリーさんと会い、舞台化の許しを得た。2015年にはかつての敵国、米ニューヨークでの公演も実現。観客の少女から「どんな困難からも立ち上がる女性の姿だった」と感想を寄せられ、若い世代に伝える使命感を覚えたという。立教大のゼミなどと協力し、本作を題材に戦争と市井の人々を巡り議論する場を設けた。

 

劇中に横浜大空襲は出てこないが、上演を控えた4月には杉田劇場で小学生を相手に、大空襲を描いた小説「真昼の夕焼け」を朗読した。横浜詩人会の会長を務めた詩人の故・筧槙二さんが、自らの体験を反映させた作品だ。「若い人たちは素直に想像力を働かせ、受け止めてくれる。多くの人生がないがしろにされた時代を、これからも伝えたい」。五大さんは、それが役者である自分の務めだと考えている。

 

開演は、26日は午後7時、27~30日は同2時。料金は5千円、学生3千円(いずれも前売り)。問い合わせは横浜夢座事務局・電話045(661)0623。

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