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(写真・神奈川新聞社)

 

カレーの街・横須賀を代表する名店、魚藍亭(ぎょらんてい)の「よこすか海軍カレー館」(横須賀市緑が丘)が27日に閉店する。オープンから15年。明治時代のレシピを忠実に再現した「元祖よこすか海軍カレー」を求め、今も全国から訪れる客でにぎわうが、建物の老朽化で苦渋の決断を強いられた。隣接する本店の活魚料理店も先月、約30年の歴史に幕を閉じたばかり。横須賀らしい伝統の一皿との別れを惜しむ声が寄せられる中、料理人の栗田秀樹さん(55)は「お客さまには感謝の気持ちしかない」と振り返り、復活を期している。

 

軍艦旗や浮輪、ライフジャケットに係留用のロープ…。れんが造りのカレー館は港情緒にあふれ、ガラスケースに並ぶサイン色紙には俳優の竹中直人さんや漫画家の蛭子能収さんら有名人が名を連ねる。「歌手の福山雅治さんも来られました」。栗田さんが自慢げに振り返る。

 

横須賀市が「カレーの街」を宣言したのは1999年。本店のおかみだった故・大河原晶子さんらが、明治時代に発行された「海軍割烹(かっぽう)術参考書」を基に旧日本海軍のレシピを再現し、同年に海軍カレー提供店の第1号に選ばれた。その後カレー館を開店。現在は市内の42店が認定を受けているが、「よこすか海軍カレーはカレー館を抜きにしては語れない」とまで言われる存在となった。

 

「飾った感じじゃなく、昔ながらの味付け」と栗田さんが話す通り、元祖カレーはあっさりとした口当たりが特徴。他にもビーフシチューやビーフカツレツなど海軍食を再現したメニューも豊富にそろい、週末には1日で計400~500食が出るという。

 

しかし晶子さんが2008年に67歳で、経営者で夫の知民(ちたみ)さんが今年4月に75歳で、それぞれ鬼籍に入った。7年前から調理を担当するおいの栗田さんが引き継ごうとしたが、建物の修繕に巨額の費用がかかることが分かり、閉店を余儀なくされた。

 

「残念。味も建物も、昔ながらの雰囲気が好きだった」と話すのは、長年通っているという市内の男性会社員(50)。栗田さんも「3年前の春、何かのイベントと重なって、元祖カレーを500食用意したのに足りなくなり、急いで仕込みをしたのは良い思い出」と目を細める。

 

店の味を再現したレトルトカレーは販売が続けられる。栗田さんは「閉店は本意ではなく悔しい。いつかは店を復活させたい。それまでレトルトカレーを食べて待っていてほしい」と話している。

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