image
(写真・琉球新報社)

沖縄科学技術大学院大学(OIST)と県水産海洋技術センターなどの研究チームは、県内で養殖が盛んなオキナワモズクの全遺伝子情報(ゲノム)の解読に成功したと、9日付の専門誌に発表した。オキナワモズクに多く含まれ、抗炎症作用などの健康効果から近年注目が高まっているフコイダンについて、マコンブなど他の褐藻では4段階に分かれている生成工程(遺伝子)が、オキナワモズクでは3段階に減り、生成効率を高めている可能性があることが分かった。

 

今回のゲノム情報を利用したモズク類の養殖技術や新品種の開発、フコイダンなどの機能性成分を生かした産業利用の活性化につながるとして期待が高まる。9日発行の英科学誌「DNA Research」に論文が掲載された。ゲノム解析はオキナワモズクが属する褐藻綱ナガマツモ目では初めて。

 

OISTマリンゲノミックスユニットの將口栄一グループリーダー、西辻光希、有本飛鳥両研究員と、県水産海洋技術センターの岩井憲司主任研究員が発表した。今回解析したのはオキナワモズクのうち、収量が多いなどの特徴を持ち、昨年9月に県水産海洋技術センターが「イノーの恵み」として品種登録した株(グループ)だ。

 

糖の一種であるL-フコースは、マコンブなど他の褐藻では生物の内部で四つの遺伝子が関わって4段階に変化し、最終的にフコイダンになる。オキナワモズクでは、最初に変化する過程で通る二つの遺伝子が一つになっていることを確認した。これによりフコイダンの生成に必要な過程が他の褐藻よりも1段階少ない3段階に省略され、効率を上げている可能性がある。

 

国内で養殖されるモズクの99%以上は県内で生産されている。一方、年によって生産量が2万トン以上から1万トン以下まで大きく変動し、安定生産が課題となっている。今後もオキナワモズクのゲノム研究が継続されることで、天候などに左右されない品種の開発が期待される。

関連カテゴリー:
関連タグ: