(写真・琉球新報社)
第3次嘉手納爆音訴訟の第1回弁論では、17歳の少女が「飛行機の爆音ではなく、虫の声が聞こえる生活がしてみたい」と訴えた。当時、意見陳述したのは、嘉手納町屋良に住む又吉姫香さん(21)だ。第3次訴訟から原告に加わり、基地のことを考える良い機会だと、父親に勧められて証言台に立った。原稿用紙3枚につづった率直な思いは、共感を呼んだ。
2016年度定期総会で原告団は、うるま市で発生した米軍属女性暴行殺人事件を受けて採択した特別決議の中で、初めて「沖縄の全基地撤去」を要求した。第2次、第3次訴訟と原告団長を務める新川秀清さんは「基地の周囲の人々は揺りかごから墓場まで爆音がある環境に置かれ、人間として当たり前の生活が送れない。少女の発言は非常に重い」と、将来を担う子どもたちの生活が日常的に破壊されていることを憂う。
又吉さんは現在も嘉手納町屋良の実家に家族と住んでいる。家では、飛行の騒音だけでなく、近くの駐機場から、ボーッと低いエンジン調整音が数十分鳴り続けることもある。防音工事を施しているため騒音は軽減されるが、閉め切った窓からは当然虫の声は聞こえない。証言した日から、今まで何も変わらない。
又吉さんは「どれだけ訴えても、結局は(裁判に)勝てないのではないか、と思うこともある」と話す。「(裁判の行方が)どうなるか分からないけど、朝と夜の少しの間だけでも、夜のみんなが寝てる時間だけでも音を気にせず過ごせる時間をつくってほしい」と真っすぐな瞳で語った。
新川団長は「司法はこれまでも爆音の事実を認めて、国に損害賠償の支払いを命じてきた。しかし、第三者行為論に基づき、肝心の飛行差し止めに至らない。私たちは司法が独立した判断をして、(被害の)根源を絶ってほしい」と力を込める。
その上で「最近は州軍機まで飛来し、自衛隊機も一緒になって訓練を繰り返す。爆音の実態は悪化している」と話し、「この状況下、全基地撤去の要求に至るのは当然だ」と話した。