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平良美恵子さんが発案した「芭蕉布ベア」
(写真・琉球新報社)

 

琉球王国時代から数百年も続く伝統織物が新しい形で生み出されていく。大宜味村喜如嘉の平良美恵子さん(68)が「芭蕉布ベア」を発案した。世界中で愛されているくまの縫いぐるみ「テディベア」を芭蕉布で製作。着物や帯など従来の伝統工芸品から懸け離れたアイデアは、伝統を絶やしてはいけないとする作り手の思いからだった。

 

涼しげで軽やか、それでいて丈夫。テディベアのような柔らかさはないが伝統織物ゆえ、凜(りん)とたたずむ姿は気品漂う。発案者で喜如嘉芭蕉布事業協同組合理事長を務める平良さんは「世界中にテディベアのコレクターがいるのは分かっていた。手応えは感じている」と語る。

 

昨年11月には米国ニューヨークで県内工芸品の展示会を実施した。芭蕉布ベアは一つ千ドル(約10万円)にもかかわらず三つ売れた。芭蕉布の名を世界に広げるためにも、継続して生産・販売を続ける構えだ。

 

芭蕉布の里、大宜味村喜如嘉は人口減が進み作り手も高齢化している。原材料となる糸芭蕉の原木の伐採から完成までの工程は20を超える。畑から始まる芭蕉布作りには、重労働がつきものだ。

 

戦後、芭蕉布の歴史は戦争とともに消えてもおかしくなかった。現代まで伝統が受け継がれてきたのは、平良さんの義母で人間国宝の平良敏子さん(96)をはじめとする女性たちが知恵を絞り、芭蕉布の裾野を広げていったからだ。米統治下には、テーブルクロスやクッションカバーなど着物以外の商品も生み出した。時代にふさわしい芭蕉布を作ることで、芭蕉布の名を広く発信することができた。今後について「海外への挑戦は意識している。多角的な形でいかないと」と美恵子さんは先を見据える。

 

技術や文化の伝承は、人材不足からの焦りもある。だが、先人たちは沖縄戦を乗り越え、伝統技術の継承に尽力し時代とともに新たな命を吹き込んできた。「先人たちの思いを知っているからこそ余計に守らないといけない」と美恵子さんは話す。芭蕉布の挑戦はこれからも続いていく。